中妻じょうた

板橋区議会議員 中妻じょうた のオフィシャルホームページです。ブログやSNSを通じて積極的な発信・交流をしております。是非ご意見ください!

板橋区議会議員

ホーム > ブログ > なぜ、自らの良心が語れないか―「ハンナ・アーレント」を観て(1)

なぜ、自らの良心が語れないか―「ハンナ・アーレント」を観て(1)

昨日12/5夕方、特定秘密保護法案について参議院国家安全保障特別委員会にて採決が行われ、自民、公明両与党の賛成多数で可決されました。本日(12/6)13:00からの本会議で可決する可能性があります。
そんな昨日の夜、私は神保町の岩波ホールに赴きました。話題の映画「ハンナ・アーレント」。これはまさに、今見るべき映画だと思ったからです。



IMG_3315

ハンナ・アーレントは1963年、逃亡を続けていた元ナチス親衛隊のアドルフ・アイヒマンがアルゼンチンで極秘逮捕され、イスラエルで裁判を受けることになると聞き、自らも抑留経験のあるユダヤ人としてこの裁判を傍聴しなければと決意しました。

アイヒマンはホロコーストに関与し、数百万人を強制収容所に送り込みました。
アーレントは多くのユダヤ人同様、この裁判の被告人席に座るのがどれほどの極悪人なのかと見守っていましたが、予想に反して、アイヒマンがあまりにも平凡な小役人であったことに逆に衝撃を受けました。

なぜ、こんな凡庸な男が、人類史上最悪の凶行をやってのけたのか。

アーレントはこの問題意識のもと、アイヒマン裁判の傍聴記録を中心に執筆を行い、1963年に記事をまとめて「イェルサレムのアイヒマン」を出版しました。

IMG_3316

岩波ホールで映画を見終わったあと、受付で売られていた「イェルサレムのアイヒマン」を購入し、神保町の名喫茶店「さぼうる」で座って、パラパラと開いてみました。

 

「イェルサレムのアイヒマン」が大炎上

この「イェルサレムのアイヒマン」は大バッシングを巻き起こしました。
極悪人として裁かれるべき元ナチス親衛隊員を「平凡な人」と表現することは、ナチス擁護ではないかと受け取られたためです。

それだけではありません。
アーレントはこの本の中で、ユダヤ人の一部指導者がホロコーストに関与していたという事実も書いたのです。

絶滅収容所で犠牲者の殺害に直接手を下したのは普通ユダヤ人特別班だったという周知の事実は、検察側証人によっていさぎよくはっきりと確認された――彼らのガス室や死体焼却炉での働きも、死体から金歯を抜き毛髪を切り取ったことも、墓穴を掘り、また大量殺人の痕跡を消すために後になってふたたびその同じ穴を掘りかえしたことも、死刑執行人すらユダヤ人が勤めるほどにユダヤ人〈自治制〉が実施されていたテレージエンシュタットではユダヤ人の技術者たちがガス室を作ったことも。

アイヒマンは次のように証言したと、この本では書かれています。

「(テレージエンシュタットにおける)ユダヤ人評議会の構成、仕事の分担は、議長の任命をのぞいては評議会そのものに任されていました。(中略)
この役員たちはいつも鄭重に扱わねばなりませんでした。彼らには命令を下すことはありませんでした。その理由は簡単で、主だった役員たちがこれをしろだのしなければならぬだのという言葉でなすべきことを命じられていたら、全然仕事は捗取らないからです。当の人物が自分のやっていることに不満があれば、仕事全体が渋滞するでしょう…。われわれは謂わばすべてが愉快にやれるように最善を尽くしたのです。」

ホロコーストは悪魔が行なった所業ではなく、普通の人々が行なった。
当のユダヤ人すら加担した。
このようなアーレントの指摘は激烈な反応を呼びました。今風に言えば「大炎上」です。

映画「ハンナ・アーレント」の中で、私としては、まったく個人的な感情から、2つのシーンが最も印象に残りました。
1つは、アーレントが原稿をタイプライターで書いているシーンです。
私の脳内では、即座にこのタイプライターが「ノートパソコン」に置き換えられました。

そしてもうひとつ印象に残ったのが「机の上に置かれた2つの封書の山」です。
出版後、怒涛のような反応があり、大量の封書がアーレントの事務所に送られてきました。
アシスタントがその2つの山を説明します。

「こちらが、賛成・共感したという感想のものです」…ちびっとした山です。
「こちらが、批判的な内容のものです」…山積みです。

アーレントはこの本を出版したために猛烈な批判を浴び続け、大切にしていた友人を何人も失いました。

ネットがなくてさえこの炎上ぶりです。
もしこの時代にネットがあったら…。寒気がします。
私もいろいろありまして、一部では「中妻炎上太」などと呼ばれてしまう始末^^;
もちろん私の炎上などアーレントに比すべくもありませんが、どんな心境に陥るかは想像ができます。

 

政治家がハンナ・アーレントになるのは無理なのか

ハンナ・アーレントは思想家であり大学教授でした。
自らの良心に従って本音を話すことについてのハードルは低いはずですが、それでも教授の座を退くことを求められるなど、自らの意見によって立場が脅かされたことが映画でも表現されています。

ましてや、議会制民主主義制度を取る国の政治家が本心をすべて語るなど、絶望的な難題です。
どれほど誠実に仕事をしようとしても、本心を語ることで仕事が続けられなくなってしまっては本末転倒です。

石破茂・自民党幹事長も、「デモはテロと本質において変わらない」と書いて大炎上し、撤回・謝罪するはめになりました。
私はこの見解にまったく賛同できませんが、石破幹事長はおそらく「自らの良心に従って本心を」語ったのでしょう。
しかしそれをすることで特定秘密保護法案が暗礁に乗り上げかねないとわかったとき、「石破氏の良心」は曲げざるを得ないことになるわけです。

民主主義という重い責任を背負って、政治家はどこまで誠実な仕事ができるでしょうか。
考え続けなければなりません。

「イェルサレムのアイヒマン」発表時は大炎上したアーレントですが、遠く時空を離れた現代の日本において、岩波ホールは連日満席になっています。
今の政治家の行動は、歴史の審判に堪えられるのでしょうか。

書きたいことがたくさんあります。
ジグソーパズルを埋めるように、続きます。

ブログ筆者プロフィール

ブログ筆者プロフィール

中妻 じょうた 板橋区議会議員

板橋区議会議員「IT区議」中妻じょうたです。 長年ITプロフェッショナルとして働いてきた経験を生かし、より多くの区民の声を区政に反映する仕組みづくり、そして人の可能性を伸ばす教育・子育て、また障がい者福祉など社会弱者の対策に力を入れていきます。 仙台出身。東日本大震災被災地支援や原発問題には積極的に関わっていきます。 趣味は中国武術、マラソン、ゲーム、読書など。

板橋区議会議員

お問い合わせはこちら