3/17に行いました予算総括質問解説記事、第2回です。
今回は、私が3年間にわたって務めてきた農業委員としての知見を結集した質問。
農地と緑地についての問題提起です。


問題の出発点——5年で東京ドーム1個分の農地が消えた

「農地とグリーンインフラの積極拡充を求めて」——これは私が繰り返し議会で取り上げてきたテーマです。今回の予算委員会では、板橋区基本計画2035が掲げる「緑被率維持」という目標が、果たして実現可能なのかを正面から問いました。

板橋区基本計画2035の120ページには、今後10年間で緑被率を18.76%に維持するという目標が掲げられています。この18.76%は「現状維持」——つまり減らさないということです。

しかし現実はどうか。この5年間で緑被率はすでに0.6ポイント減少しています。農地面積で見ると、令和元年度には18.8ヘクタールあった農地が、令和6年度には15.2ヘクタールまで減少。差し引き約3.6ヘクタール——東京ドーム1個分の農地がこの5年間で消えています。

緑は放っておくと減り続けます。「維持する」と掲げるなら、積極的に緑を確保する施策を打たなければ目標は達成できません。今回の質問はこの矛盾を正面からただしたものです。


板橋区の農地・緑地の現状

板橋区には現在、生産緑地地区として約7.61ヘクタール・53地区が指定されています。農地は農産物を生産する場としてだけでなく、緑地としての機能、災害時の避難地としての機能など、多面的な価値を持つ貴重な空間です。

しかし、相続に伴う農地の宅地化は止まらず、減少傾向が続いています。いたばしグリーンプラン(現行は「いたばしグリーンプラン2025」)では緑被率の目標を掲げていますが、現実の数字は目標と逆方向に動いています。


質問①:農地買取り保護策——区はやらないのか

私の質問(2問続けて):
1. 農地を保護することなくして緑被率を維持することはできないと考えるが、区は区民農園買取りなどの農地保護策を実施しないのか。
2. 農地保護策をしないなら、どうやって18.76%という緑被率を10年間維持するのか。

産業経済部長の答弁:

農地の保全が喫緊の課題であることは認識している。現時点で区が農地を買い取ることは予定していないが、新たな農の展開を進めていくためにも、緑被率を維持するための様々な方法を検討してまいります。令和8年度は「未来に残す東京の農地プロジェクト補助金」を創設し、農地の多面的機能を発揮させ、地域と調和した農地の有効活用・保全を図り、農の価値をアピールしていく。

土木部長の答弁:

平成24年策定の「板橋区緑の保全方針」に基づき、所有者から合意が得られた生産緑地を買い取り、赤塚植物園に農業園を増設するなど、可能な限り農地の保全に努めてきた。しかし相続等に伴う農地・屋敷林の宅地化には歯止めがかかっていない。今後は駅前の再開発などまちづくりによる新たな緑化空間の創出や、公園樹木の剪定方法を工夫して樹間(木と木の間隔)を適切に保つことで、緑被率の維持に努める。

農地買取りは「予定なし」。公園の木の剪定方法を工夫することで緑被率を維持するという答弁は、正直なところ私には実現のイメージが湧きませんでした。

なぜなら、「樹間確保」とは木と木の間隔を適切に保つことで、上空から見たときに緑の面積が重複なく計測されるようにするというアプローチです。既存の公園の中での工夫には限界があります。現在ある緑地の中で農地をやっても緑被率の増加にはつながりません。積極的に新たな土地を緑地化しなければ、消えた3.6ヘクタールを取り戻すことは到底できません。

むしろ、今あるうちに農地を買い取るほうが、新たな土地を取得して緑地化するより安上がりではないかと、私は強く感じています。


質問②:グリーンインフラとしての農地——世界の先進都市はどう動いているか

次に、農地を単なる「食料生産の場」としてではなく、「都市インフラとしての緑(グリーンインフラ)」として捉え直すよう求めました。

世界の先進都市の動き

ニューヨーク市(2022年)
市長直轄の「都市農業オフィス(Mayor’s Office of Urban Agriculture)」を新設。都市農業を趣味ではなく行政の重要課題として正式に位置づけ、コミュニティガーデンや都市農場の支援・拡充などを推進しています。ヒートアイランド対策としての効果も注目されています。

パリ市(2016年〜)
「レ・パリクルター(Les Parisculteurs)」という大規模な緑化農業プロジェクトを展開。屋上・壁面・地下空間を農業ベンチャーなどに貸し出すことで、この10年で70以上の都市農業プロジェクトを実現、面積で約36ヘクタール(東京ドーム約7.7倍)の農地を創出しました。ポルト・ド・ベルサイユ見本市会場の屋上にはヨーロッパ最大規模(約1万4,000㎡)の都市型屋上農園「ナチュール・ユベンヌ(Nature Urbaine)」も開業し、商業的にも成功しています。

大阪・うめきた公園(グラングリーン大阪)
「ビルを建てるより緑をつくったほうが経済効果が高い」という試算のもと、大阪駅前に残った最後の広大な一等地を全て緑地にするという決断が行われた事例です。ビジネス拠点と緑の共存が都市のブランド価値を高めるという発想の転換が、この決断を支えました。

グリーンインフラが持つ多面的な価値

グリーンインフラとは、農地・公園・街路樹・屋上緑化・壁面緑化・雨庭などを、単独の「緑」としてではなく、都市インフラ全体のネットワークとして捉える考え方です。その効果は、単なる「景観」にとどまりません。

  • ヒートアイランド緩和効果:植物の蒸散作用によって周辺気温を下げる
  • 雨水の貯留・浸透効果:洪水・内水氾濫リスクの低減(防災機能)
  • CO₂吸収・生物多様性の維持:気候変動対策
  • 食育・農業体験の場:子どもの教育・地域コミュニティの核
  • 心の安らぎ・精神的健康への効果:ウェルビーイングの向上
  • 都市のブランド価値向上:「農のあるまち」としての板橋区のアイデンティティ

これらの価値を踏まえれば、農地・緑地への投資は「コスト」ではなく「都市インフラへの投資」と捉えるべきです。

私の質問: 板橋区のブランド価値を高めるために、農地を含む緑の積極的拡充策を求める。見解は。

土木部長の答弁:

次期板橋グリーンプラン2035の策定を進めており、「グリーンインフラの推進による緑の機能の活用」を改定方針の一つとして掲げ、素案の段階で都市建設委員会に報告した。農地の保全と継承、まちなかの緑の創出につながる公園の新設・改修を進める予定。田園風景をとどめる水田を設置した水車公園や農業園を設置した赤塚植物園に加え、令和9年開設予定の板橋公園でも農園の整備を予定。区の特色である農のみどりを継承する形で魅力ある公園整備を進め、区のブランド価値向上につなげていく。

「グリーンインフラ」という概念を次期グリーンプランに盛り込む方向性は評価できます。令和9年に開設予定の板橋公園への農園整備も前向きな取り組みです。


今後の課題——コンクリートが増える時代に、緑をどう守るか

問題は、再開発・建設が加速する中で、どうやって緑被率を「維持」どころか「増やす」方向に持っていくかです。

私が主張したいのは以下の点です。

農地保護は地域の安全保障でもある。農地は一度宅地化されたら取り戻すことが極めて困難です。今のうちに保全・取得しておくことが長期的にははるかにコスト効率がよいはずです。

屋上・壁面・地下空間の活用を本格化せよ。コンクリートが増える板橋区の現実の中で、NY・パリの事例に倣い、建物の屋上・壁面・地下空間を活用した農地・緑地の創出を積極的に検討すべきです。新設される建物に緑化義務を課す制度設計も考えられます。

農地をグリーンインフラとして評価し、財政的根拠を確立せよ。農地の多面的価値(防災・ヒートアイランド・生物多様性・食育・コミュニティなど)を金銭的に評価するエビデンスを蓄積し、「農地への投資は費用対効果が高い」という論理を行政内部で確立することが必要です。

板橋区基本計画2035が「緑被率18.76%の維持」を掲げた以上、その目標をどうやって実現するかは、区の本気度が問われる問題です。引き続き、具体的な施策を求めて取り上げていきます。

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