3/17の総括質問解説、最終回です。
これも私のライフワークである障がい者支援。
「あいポート」をつくった時の精神に今一度立ち返ってほしい、という話です。
この問いを立てるにあたって
そもそも私が板橋区議会議員をめざしたのは、私の長男が自閉症だったからです。
障がい者支援は、市場原理ではできない。政治と行政の力でなければできません。
私は議員であると同時に「当事者の親」でもあるわけですが、私と同じ想いで精力的に活動を続けているのが、板橋区発達障害児者親の会(IJ(アイジェイ)の会) の皆さんです。
今回の予算委員会でこのテーマを取り上げたのは、IJの会からいただいた声がきっかけです。「令和8年2月5日に行われた自立支援協議会当事者部会では、一方的な報告のみで、障がい者総合福祉センターの機能についての協議が行われなかった」「私たちの話をちゃんと聞いてもらえているのか、という印象を持っている」——そのような切実な声を受け止めての質問です。
あいポートはどうして生まれたか——経緯が示す「正しいプロセス」
板橋区発達障がい者支援センター「あいポート」(小茂根4丁目)は、区内の発達障がいのある方とその家族のための総合的な支援拠点として機能しています。しかしこの施設が生まれるまでには、長年の地道な歩みがありました。
IJの会が主催した勉強会に、超党派の区議会議員が毎回参加し、行政担当者も一緒に当事者本人の講義を受けながら、「発達障がいとはどういう特性か」「ふさわしい支援とは何か」を共に学んでいきました。政治・行政・当事者家族が「同じテーブルについて、時間をかけて信頼関係を育んだ」プロセスがあいポートを生み出したのです。
今まさに動き出している板橋区障がい者総合福祉センター(仮称)の計画は、このあいポートの精神を引き継いでいるか——それを問うのが今回の質問の核心です。
板橋区グリーンホール再整備と障がい者総合福祉センター
現在、板橋区グリーンホールの再整備計画が進んでいます。令和8年(2026年)3月には、この再整備方針(案)についての説明会が開催されました(参考:板橋区公式HP)。
この再整備の中に「障がい者総合福祉センター(仮称)機能」を位置づけるという方針が示されています。板橋区発達障がい者支援センター「あいポート」は現在小茂根にあり、グリーンホール再整備によって、区内の概ねどの地域からも来やすい場所に障がい者福祉拠点が設立されることが期待されています。
しかしこのグリーンホール再整備の完成には、まだ非常に長い時間がかかります。その間も、今まさに支援を必要としている当事者・家族の方々がいます。
質問①:過去の経緯——担当部署はあいポート設立の歩みを引き継いでいるか
私の質問: 現在の障がい者担当部署は、あいポート設立に至るまでの経緯をどのように引き継いでいるか。
福祉部長の答弁:
他自治体施設への視察を実施したことや、IJの会などの勉強会を開催したことなど、あいポートの設立に関する起源については障がい者政策課で把握している。
「把握している」とのことですが、「把握」と「実践」は別物です。経緯を知識として持っていることと、そのプロセスの良さを現在の施策に反映させることは、全く異なります。
質問②:当事者・議会を含むオープンな場での協議の継続を
あいポート設立の過程が示したのは、「支援者だけで考えた支援」ではなく「当事者が主体となって作り上げた支援」の大切さです。
私の要望・質問: 障がい者担当部署は、当事者及び区議会を含むオープンな場における施設・サービスについての協議を引き続き行ってほしい。
福祉部長の答弁:
障がい者の方だけではなく、多くの障がいをお持ちの方が気軽に相談できる場所となるよう、IJの会も含め、様々な当事者団体のご意見を丁寧に聞きながら検討を重ねていきたい。
「丁寧に聞く」——この言葉を、どう具体化するかが大切です。「一方的な報告のみ」だったという当事者の声がある以上、「丁寧に聞く」の中身を問い続けていく必要があります。また、区が「発達障がい者に限らず、様々な障がいのある方が利用できる施設」として整備する方向性を示しているなかで、発達障がいの当事者の声がどう反映されるかを引き続き注視します。
質問③:当事者アンケートをきちんと参照せよ
今回、IJの会は「発達障がい者の親なき後の支援に関するアンケート調査報告書」を作成・提出しています。「親なき後」——これは発達障がいのある方の保護者にとって最大の不安の源です。自分が先に亡くなった後、子どもが適切な支援を受けられるかどうか。
私の質問: 当事者から提出されたアンケートをきちんと参照し、参考にして計画を進めてほしい。
福祉部長の答弁:
発達障がい者の親なき後の支援に関するアンケート報告書については確認しており、不安を抱えているということは把握している。しっかり参照していく。
「しっかり参照する」という答弁を得ました。今後の計画にどのように反映されるかを注視します。
質問④:区役所近くへの小規模発達障がい支援拠点の早期設置を
グリーンホール再整備の完成まで、まだ長い時間がかかります。その間、当事者・家族は待ちます。しかし支援を必要とする瞬間は、待ってくれません。
IJの会の皆さんから強く求められているのは、「今すぐ、アクセスしやすい場所に、小さくてもいいから発達障がいのための拠点を作ってほしい」という声です。
あいポートは小茂根にあります。板橋区の全域から見ると、お世辞にも交通の便が良いとは言えません。また現在の障がい者福祉センターは高島平にあり、こちらも区内の別の地域に住む方にとっては行きにくい。
私の質問: 区役所近くに小規模でも良いから発達障がい支援拠点を早急に設置してほしい。
福祉部長の答弁:
小規模な発達障がい者のための支援拠点を設置することは予定していない。ただし、障がい者福祉センター(高島平)において、2月から月1回、様々な障がいのある方のための居場所支援事業として、オープンスペースで交流サロンを試行的に実施している。
新たな拠点設置は「予定なし」という答弁は残念です。交流サロンの試行は評価できますが、高島平という立地の問題は解消されていません。引き続き求めていきます。
質問⑤:練馬区「すてっぷ」の視察を求める
発達障がい者支援の先進事例として、関係者の間で繰り返し「参考になる」と名前が挙がるのが、練馬区立総合福祉事務所「すてっぷ」です。私自身も何度か視察させていただいています。
あいポート設立当時の担当者はすでに異動されている方も多く、あらためて職員に見ていただくことに意義があると考えます。
私の質問: 練馬区のすてっぷを改めて担当職員に視察してもらい、どこがすばらしいと言われるゆえんなのかを知見として更新してほしい。
福祉部長の答弁:
今後グリーンホールに障がい者福祉センター機能をつくっていくが、ご紹介いただいた練馬区のすてっぷも含め、他自治体の事例を参考にしながら整備内容の検討を進めたい。区としては、発達障がい者に限らず、様々な障がいのある方が利用できる施設として整備したい。
「参考にする」という答弁を得ました。すてっぷが高く評価される理由——それは施設のハードだけでなく、長く当事者と関係を築き続ける「人」の部分にあります。ぜひ、その本質を学んできてほしいと思います。
「親なき後」に備えるために——必要なのは「ネットワーク」という人間関係
最後に、発達障がい者支援について私が最も強く訴えたいことを述べます。
「親なき後にどう備えるか」——これは、発達障がい者支援の中心にある課題です。そしてこの問いへの答えは、施設や制度だけでは解決できません。
その人がどういう特性を持っているか、どういうことが好きで、どういうことが苦手か、どういう状況のときに助けが必要か——こうしたことを「知っている人」が、親が亡くなった後も存在し続けること。それが最大の備えです。
施設の箱を作ることは大切ですが、それ以上に大切なのは、長く続く「関係性」です。担当者が異動で入れ替わり続けるなかで、組織としてこうした関係性を引き継いでいく仕組みをどう作るか——これが、これからの障がい者支援行政の最大の課題の一つです。
あいポートを生み出した「時間をかけて信頼関係を育むプロセス」を、新たな施設づくりにも活かしてほしい。IJの会の声を「参考意見」として片付けるのではなく、共に作り上げる「協働」の姿勢で臨んでほしい。このことを強く求めて、質問を締めくくりました。