板橋区は令和6年度から、認定NPO法人カタリバに委託する形で「ヤングケアラーアドバイザー」を設置しました。家族の世話を担う子どもを、現場に近いところから支える官民連携の仕組みです。本記事では、その仕組みと1年間の取り組みを整理し、中妻じょうたの視点から評価と課題を述べます。
(本連載「見えない子どもたちへ」第3回。第1回・第2回では板橋区の実態調査データを扱いました。今回は支援の担い手に焦点を当てます)
ヤングケアラーアドバイザーとは何か
令和6年度より、板橋区にヤングケアラーアドバイザー(認定特定非営利活動法人カタリバ 五味菜々緒氏、有働裕也氏)が設置されました。アドバイザーの役割は大きく3つです。
1つ目は、ヤングケアラーの子ども(または可能性のある子ども)やその家庭に関しての関係機関からの相談に対応し、各家庭に合わせた対応方針を検討し、助言することです。2つ目は、ヤングケアラーの子どもやその家庭に必要な連携先を検討し、連携先へのつなぎや会議の調整を行うこと、また、民間団体との支援について連携を図ることです。3つ目は、区職員や関係機関などの支援者向けの研修を実施することです。
つまりこの制度は、子ども本人に直接会う窓口というより、学校・福祉・医療などの現場の支援者を後方から支える「支援者の支援者」という位置づけです。ヤングケアラーは家庭内のデリケートな事情に関わるため、教員や福祉職員が一人で抱え込みやすく、対応に迷うケースが少なくありません。そこに専門知見を持つ第三者が入ることで、支援の質を底上げする狙いがあります。
なぜカタリバなのか——板橋区の先進性
カタリバは、2021年12月からヤングケアラーとその家族への伴走支援に取り組んできた団体です。板橋区はヤングケアラー支援法が成立する以前から、独自に区内のヤングケアラーの実態調査を実施し、支援に関するガイドラインの作成や啓発動画の作成、支援ケース会議などに取り組み、ヤングケアラー支援に力を入れてきました。その積み重ねの上に、教育・福祉・介護・医療等の多くの関係機関と連携体制を構築したり、支援にかかわる助言および周知啓発に関する活動を行ったりする、ヤングケアラーコーディネーター・アドバイザーを設置する形で、カタリバとの協働が始まりました。
法律ができてから動き出したのではなく、法律ができる前から独自に手を打っていた。この点は、板橋区の取り組みとして率直に評価してよいと考えます。
1年が経って——見えてきた「見えにくさ」
さて、制度の中身は分かりました。一方で、この1年間で相談が何件寄せられ、何件が具体的な支援につながったのか、研修は何回・何人を対象に実施されたのか、といった定量的な実績は、区の公式ホームページ上では公表されていません。
これは板橋区に限った話ではなく、全国的にもヤングケアラー支援の効果測定は発展途上の分野です。それでも、住民が制度の効果を確かめられる「見える化」がなければ、事業の是非を議論することも、次の予算を裏づけることも難しくなります。
私は令和8年第2回定例会をはじめ、これまでの議会質問の記録を確認しましたが、カタリバ事業の実績数値について区が具体的に答弁した記録は見当たりませんでした。今後の議会質問において、相談件数・支援につながった件数・研修実施回数といった実績の開示を求めていく考えです。
中妻じょうたの視点
官民連携そのものは、専門性の高いNPOの知見を区政に取り込む有効な手法です。評価すべきところは評価しつつ、「動いているはずなのに、成果が見えない」状態を放置してはいけません。
ヤングケアラー支援は、一件ずつの積み重ねが子どもの人生を左右します。だからこそ、件数や実績を「もっと支援を広げるための材料」として公表してほしいと考えます。
住民のみなさまへ
もし身近に、家族の世話で学校や友人関係に無理をしているように見える子どもがいたら、一人で抱え込まず、まずは板橋区子どもなんでも相談(0120-925-610、24時間無料)に相談してください。相談する側も、される側も、責められることはありません。
もちろん、私へのご連絡もOKです。
前回の記事を読んだ方から、情報提供もいただきました。スクールソーシャルワーカーはケース対象しか動いておらず、今回ご紹介したヤングケアラーアドバイザーの効果にも疑問がある、という趣旨でした。
大変ありがたい情報です。いただいた情報をもとに所管にヒアリングを行なっていきます。こうした現場の情報もぜひ教えてください。
次回・第4回では、2024年6月に施行された改正子ども・若者育成支援推進法の内容と、板橋区に必要な条例・指針の在り方を取り上げます。
【出典】
– 板橋区公式ホームページ「ヤングケアラーアドバイザー」
– 認定NPO法人カタリバ ニュースリリース(2024年7月19日)
※本記事執筆時点で、令和6年度以降の相談件数・研修実施回数・令和8年度予算額について区公式サイトでの公表は確認できませんでした。今後の議会質問等で確認され次第、続報でお伝えします。