4回にわたってお伝えしてきたヤングケアラー連載も、今回が最終回です。大切なのは、実態を知って終わりにしないことです。板橋区が次に何をすべきか、具体的な提言としてまとめます。
4回分の振り返り
第1回では、板橋区の令和5年度実態調査で、小学生の9.9%、中学生の5.6%が家族の世話をしていると回答した現実をお伝えしました。第2回では、学校や地域が抱える「発見の壁」を取り上げました。子ども本人に自覚がなく、家庭内のことは表に出にくいという構造的な難しさです。
第3回では、令和6年度から始まったNPOカタリバとの官民連携を検証しました。ヤングケアラーアドバイザーの設置は、板橋区の先進的な取り組みだと評価していますが、議会や住民が効果を検証できる仕組みが必要です。
第4回では、2024年6月の法改正から2年が経っても残る「過度に」という要件の壁と、区独自の指針づくりの必要性を論じました。
子どもたちの「声にならない声」
板橋区や国の調査に共通するのは、世話をしていても「相談したことがない」子どもが多いという事実です。国の調査では、世話をしている家族が「いる」と答えた子どものうち、誰かに相談した経験が「ない」割合は5〜6割にのぼります。相談しない理由として最も多いのは「誰かに相談するほどの悩みではない」という回答で、次いで「相談しても状況が変わるとは思わない」が続きます。
これは、子ども自身が助けを求める発想を持てていない、あるいは「相談していい」と思えていないことを示しています。板橋区の調査でも、生活への影響として「自分の時間が取れない」「勉強する時間がない」と答えた中学生が一定数いました。困りごとがあっても、それを口にする回路がまだ十分に用意されていないのです。
中妻じょうたが考える6つの提言
連載を通じて見えてきた課題を踏まえ、板橋区が次に取り組むべきことを6つにまとめます。
1点目は、子ども自身が使いやすいSNS相談窓口の拡充です。電話よりもハードルが低く、匿名性も保ちやすい手段を増やす必要があります。
2点目は、学習支援・居場所づくりとの接続です。ヤングケアラー支援を単独の事業とせず、既存の子ども食堂やまなぽーとなどの居場所と連携させることで、支援の網を広げられます。
3点目は、多文化家庭への通訳支援との連動です。日本語が不自由な家族の通訳役を担う子どもも、ヤングケアラーの一形態だからです。
4点目は、区独自の支援指針、将来的には条例の検討です。法律の「過度に」という要件だけに頼らず、板橋区として支援の対象を狭めない姿勢を明文化すべきです。
5点目は、定期的な実態調査の実施です。国は令和7年度に全国調査を再実施しています。板橋区も令和5年度調査から間を置かず、次の調査に取り組むべきです。
6点目は、分野を越えた支援体制の構築です。板橋区が策定した高齢者保健福祉・介護保険事業計画2026には、ヤングケアラー支援について、高齢福祉分野に限らず分野別の垣根を越えた連携を図り、重層的かつ包括的な支援体制の構築に向けて検討を進めるとの記述があります。障がい者施策・高齢者施策と接続することで、家族全体を支える視点が持てます。
住民の皆さんにお願いしたいこと
板橋区はすでに、小学生向け「ぼくってヤングケアラー?」、中学生以上向け「わたしってヤングケアラーかな?」という啓発動画を作成し、当事者への周知に取り組んでいます。ただ、こうした取り組みの多くは、子ども本人だけでなく、周りの大人が知っていて初めて生きてきます。
もし身近に、家族の世話で疲れている様子の子どもがいたら、まずは話を聞いてあげてください。板橋区の相談窓口「板橋区子どもなんでも相談」(0120-925-610)は、通話料無料・24時間365日受け付けています。
中妻じょうたは、この連載で取り上げた6つの提言を、今後の一般質問や予算審査の場で継続的に取り上げてまいります。見えない子どもたちの声を、見える形にしていく。それが、この連載を通じて私が皆さんにお伝えしたかったことです。
引き続き、皆さんのご意見・体験談もお待ちしています。