板橋区の条例には、路上禁煙地区で吸った人に「1万円以下の過料」を科す規定が、2004年からすでに書かれています。
ところが、この規定は22年間、一度も使われていません。
9月25日の区民環境委員会で、この過料の適用を求める陳情が審査され、採択を主張したのは、委員長を除く委員7人のうち私ひとりでした。

何が起きたのか

審査されたのは、路上禁煙地区での喫煙に過料を課すことを求める陳情第150号です。
陳情には、大山駅周辺で注意した住民が、火のついたたばこを近づけられそうになったという趣旨の経験も書かれていました。

委員長を除く委員7人のうち、採択を主張したのは私だけでした。
残る6人は不採択の立場でした。
不採択側の主な理由は、「まずはマナーアップや喫煙所の整備から」というものだったと私は受け止めています。

なお、この陳情は10月14日の本会議で採決される予定です。
結果が出たら、あらためてご報告します。

「罰則がない」のではなく、「書いてあるのに眠っている」

陳情には「罰則がないため」という趣旨の指摘があります。
住民の実感としては、そのとおりでしょう。
しかし制度の上では、罰則は「無い」のではありません。

2004年(平成16年)の条例改正で、板橋区は次の3つを決めました。

  • 区内全域で歩きたばこをしないよう努める(努力義務)
  • 特に必要な地区を「路上禁煙地区」に指定できる
  • 路上禁煙地区での違反者に、1万円以下の過料を科す

このうち過料の章は、改正条例の付則で「板橋区規則で定める日から施行する」とされています。
つまり、施行日を決める規則がつくられていないのです。

平成29年(2017年)第1回定例会で、区長はこの規定について「現在、未施行」と答弁しています。
平成23年(2011年)第3回定例会でも、区長は「現在までのところ、実績はございません」と述べています。
今回の委員会でも、所管からは「過料の規定はあるが、徴収するための手続きが定まっていない」という趣旨の答弁がありました。

ここで大事なのは、過料の施行に新しい議決は要らないという点です。
規定は2004年に議会が可決済みです。
区長が規則で施行日を定めれば、使い始められます。

禁煙地区は8つ。17年間、増えていません

板橋区の路上禁煙地区は現在8地区です。
成増駅、東武練馬駅、上板橋駅、ときわ台駅、大山駅・区役所、高島平駅、志村坂上駅、板橋駅・新板橋駅の各周辺です。
(出典:板橋区公式HP 喫煙マナーの向上と路上禁煙地区)

指定は2004年度に3地区から始まり、2009年に8地区になりました。
その後の17年間、新しい地区は増えていません。

大山駅・区役所周辺は、最初に指定された地区のひとつです。
一方で、令和8年3月の予算審査特別委員会では、8地区のうち喫煙所等があるのは4地区5か所という趣旨の発言がありました。
喫煙所のない地区の中に、大山も含まれています。

22年間、「まずはマナーアップ」と言い続けてきた

区が過料を使わない理由として挙げてきたものは、会議録をたどると4つに整理できます。

  1. まずはマナーアップを進める(2004年から。「当面」「今年度は」という説明が続く)
  2. 費用対効果(2008年から。千代田区の初期費用が根拠)
  3. 実務や公平性の課題(2017年。全員に科せない、納付を拒む人がいる、など)
  4. 手続きが定まっていない(2026年)

注目したいのは、「効果が上がらなければ過料を検討する」という説明が、2004年に条例を作ったときの区の答弁にすでにあることです。
その「当面」が、22年続いています。
「まずは」の段階は、もう十分に過ぎたのではないでしょうか。

他の区は、実際に徴収しています

東京都の資料などによると、23区で路上喫煙の過料を実際に徴収しているのは、千代田区・渋谷区・品川区・足立区の4区です。
(出典:東京都 路上喫煙等防止条例の制定状況(令和8年4月1日基準)、中野区議会 建設委員会資料 令和6年10月7日)

  • 千代田区:過料2,000円。区内全域。2002年から累計146,676件(令和8年3月まで)
  • 渋谷区:過料2,000円。令和7年度は27,516件。2026年6月から電子決済も選べるようになりました
  • 品川区:過料1,000円。令和5年度は134件
  • 足立区:当面1,000円。令和5年度は728件

千代田区は、2026年10月1日から過料のキャッシュレス決済を全面施行しています。
区内全域で、指導員が携帯型の決済端末を持ち、クレジットカードや交通系IC、コード決済でその場で支払えます。
(出典:千代田区公式HP 過料徴収におけるキャッシュレス決済を導入します、渋谷区公式HP 過料処分件数の実績)

渋谷区の件数が増えているのは、違反が増えたとも、取締りを強めたとも読めます。
ですから、過料で違反が減ったと言うつもりはありません。
言えるのは、年に2万件を超える徴収が現場で実際に回っている区がある、ということです。
区が挙げてきた「全員に科せない」「その場で払わない人がいる」といった課題に、他区は実務で答えを出しています。

税収を理由にしなくてよい

「たばこ税が減るから、区は踏み切れないのでは」と思う方もいるかもしれません。
しかし、平成30年(2018年)第4回定例会で、区長は、たばこ税の減収は財政的には痛手としつつ、住民の健康や生命が守られ、医療費の減少も見込まれるなら、ある程度受忍すべきという趣旨の答弁をしています。
財政は、動かない理由にはなりません。

私が採択を主張した理由

私は喫煙所の整備に反対しているわけではありません。
むしろ賛成です。
吸う場所を用意することと、禁止された場所での喫煙を許さないことは、順番ではなく同時に進めるものだと考えています。

理由は大きく4つです。

  • マナーアップは20年以上続けてきました。それでも陳情が出されています
  • 区設置の公衆喫煙所は高島平の1か所だけです。喫煙所の整備を待っていると、いつまでも待つことになります
  • 路上禁煙地区は、区が「ここでは吸ってはいけない」と決めた場所です。近くに喫煙所がなくても、その場で吸ってよい理由にはなりません
  • 過料の規定は、すでに議会が可決しています。必要なのは、区長が施行日を定める規則です

批判したいのは、吸う方ではありません。
書いてあるルールを、22年間使ってこなかった区の姿勢です。

みなさんにお願いしたいこと

路上喫煙の問題は、区議会に届く声の数で動きます。
陳情は、住民のどなたでも、1人からでも提出できます。
署名を集めたり、オンライン署名を立ち上げたりして、陳情に添えることもできます。

陳情の内容が適切であれば、私も協力します。
ご意見やご相談は、お問い合わせフォームからお寄せください。

10月14日の本会議の結果は、決まり次第お伝えします。

出典

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