11.28一般質問まとめ記事の2回目です。
前回はこちら。

新任の長沼教育長の教育方針を聞きたかった

去る6/24、板橋区議会は新たに長沼豊教育長を任命する人事に同意しました。
私としては、今回の一般質問が長沼教育長に直接質問する初めての機会となりましたので、長沼教育長がどのような教育方針を持っているのかを知りたく、今回の一般質問ではまず「長沼教育長の考える公教育とは何か」という切り口から入っていきました。

教育の目的は、自らの力で社会に羽ばたける人間を育成することにあると考えますが、受験さえ成功すれば安泰という時代はとうに終わり、正解のない社会の中で、それぞれの子どもの力を最大限に引き出す教育が必要です。そのためには、子どものよい面も苦手な面もまず認め、子ども自身の興味・関心を最大限に生かし、その子どもならではの力を育てる教育が必要でありましょう。

反面、これは1つの思考実験ですが、ならば現在の学校教育を全て廃止し、代わりに子ども全員に家庭教師を無償でつけるという政策を提案したとしたらどうお感じになるでしょうか。仮に予算と人材がクリアできたとしても、この政策に賛同する方はあまりいないのではないかと私も感じます。
この全員家庭教師政策には何が足りないのか、そこに公教育を考えるヒントがあります。

つまり学校には、単に学力や個々の興味・特性に応じた能力の向上だけではなく、コミュニティの一員としての成長の場であることが求められているということです。
実際そうした役割を学校は果たしてきています。
これがなければ、子どもたちが社会に出たときにうまくやっていけるかどうか、不安を抱えることになるでしょう。

反面、これは困難なテーマであり、教科書に正解が書けるようなものではなく、子どもたちも、そして教師も、お互い同士一人の人間として向き合うという学びが必要になります。

こうした困難さを伴うコミュニティの一員としての成長というテーマと学力と能力の向上というテーマの両方を、数十人の児童・生徒がいるクラスにおいて1人の教師に押しつけてきたことに日本の公教育の大きな問題があると私は考えています。
学校現場は疲弊しており、教育委員会には現場を支える責務があります。
単なるトップダウンでもいけませんし、学校に丸投げでもいけません。
現場に寄り添い、きめ細かく現場の声を聞き集め、責任を持って大方針を定め、現場の声を生かした制度設計と大胆な予算措置を行っていくべきです。

私としては、板橋区の公教育はかくあるべきと考えますが、長沼教育長は、板橋区の公教育はどうあるべきで、現状の課題は何であるとお考えでしょうか、認識を伺います。

この質問に対する長沼教育長の答弁は、以下のようなものでした。

まず、誰一人取り残さない教育を求めてについてのご質問で、板橋区の公教育と現状の課題についてです

公教育は、人が幸せに生きるためにあり、区では多様なニーズに応えることで、子どもの自己肯定感等を高め、未来を生きる子どもの資質・能力を育成することを目指しています。

現状の課題は様々ですが、授業の質の向上や不登校対応は重要であると認識しており、子どもを真ん中に据え、教育の充実に向けて環境を整えることが必要であると考えています。

課題の解決に向け、教育委員会が学校を支援し、子どもの学び方や学ぶ場所等の選択肢を増やし、学びの多様化に対応することで公教育の責務を果たしていきます。

まあ正解があるような質問ではありませんし、ひとつの正論と言える答弁ではあるのですが、なんというかもうちょっと、長沼教育長が板橋区の公教育に対してどのような想いを持っているのか、そのあたりがわかるような答弁を聞きたかったなぁ、と感じました。

不登校児童・生徒数は過去最大に。子どもの興味・関心を把握せよ

コロナ禍以降、全国で小中学生の不登校数が急増しており、板橋区でも過去最大になっています。

私の見ている範囲では、区立小中学校の不登校児童・生徒の増加は、深刻に憂慮すべき段階に来ていると捉えています。ここ5年間の不登校児童・生徒の推移を踏まえ、教育委員会の不登校に関する現状認識を伺います。

この質問に対する長沼教育長の答弁は、以下の通りです。

令和5年度における本区の不登校児童・生徒数は1,344人です。令和元年度が580人だったことから、5年間で764人増加していることに加え、不登校の要因についても多様化しており、憂慮すべき現状であると捉えています。現状を踏まえ、児童・生徒の多様な願いに対応するため、子ども自身が学び方や学ぶ場所等を選択できる学びの多様化に向けて研究を進めているところであります。

私としては、たとえ学校に来なかったとしても、子どもが興味・関心を持って出かけていっている場所がどこかにあるのであれば「とりあえず良し」と考えています。子どもが何かに興味・関心を持ち行動をしている、ということが大切です。教育委員会として、子どもの興味・関心を把握し適切なアドバイスを行うべきと質問しました。

 たとえ学校に来なかったとしても、子どもが興味・関心を持って出かけていっている場所がどこかにあるのであれば、取りあえずひきこもりの不安は遠のきます。出かける場所は、極論すれば、山登りでも魚釣りでも構わないと私は思っています。どこにも行かず、自宅から出ないという状態こそ憂慮すべきです。私としては、不登校児童・生徒の対応を学校任せにするのではなく、教育委員会として、個々の児童・生徒の現状、関心、取組を把握し、適切なアドバイスを行う仕組みを構築すべきと考えますが、いかがでしょうか、お答えください。

これに対する長沼教育長の答弁は、以下の通りでした。

不登校児童・生徒の現状の把握等についてです。教育委員会では、学校からの定期的な報告や、不登校児童・生徒本人へのアンケート調査等を通して、不登校児童・生徒の現状や関心等を把握しています。不登校児童・生徒への対応として、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの増員配置や、フレンドセンターでの体験活動の実施等、支援の充実を図ってきています。一方で、学校内外の専門機関や教職員等に相談や指導を受けていない不登校児童・生徒もいることから、今後も充実した相談体制の構築についてさらに研究していきます。

具体的にどうしていくか、今後さらに質問していきたいと思います。

「STEP UP教室」にもう少し入りやすく

通常のクラスに居づらい子どもにとって、特別支援教室「STEP UP教室」はありがたい存在であり、利用希望者が増加していると感じています。
STEP UP教室の人員を拡充し、実施頻度を増やすべきではないかと質問しました。

また、学校内の居場所として、STEP UP教室の重要性は年々高まっており、希望者も増加していると感じています。STEP UP教室の人員を拡充し、実施頻度を増やすべきではないかと考えますが、見解を伺います。

長沼教育長の答弁は、以下の通りでした。

次に、STEP UP教室についてです。STEP UP教室の希望者が増加していることは認識していますが、入室に当たっては、児童・生徒の支援レベルを踏まえた対応が求められます。支援レベルについては、各校の校内委員会において1から3まで段階的に位置づけ、支援レベル3となった児童・生徒が本人や保護者の意向を踏まえた上でSTEP UP教室の指導対象となります。指導対象となる支援レベル3の児童・生徒がステップアップ教室で適正に指導を受けることができるよう、引き続き体制整備に取り組んでいきます。

私のところには「STEP UP教室に入れない」というご意見もしばしば寄せられますが、各校の校内委員会でどのような判断をしているかがひとつのポイントになっていると考えられます。
引き続き、利用しやすいSTEP UP教室の実現に取り組むとともに、学校内外に多様な居場所を設けるよう提言を続けていきます。

関連記事

  • 最新記事
TOP