「障がいと共に生きる板橋へ——中妻じょうたの障がい者政策ノート」第2回です。
前回は私が障がい者政策に取り組む原点と、障がいとは何かという基礎をお話しました。
今回は数字を見ていきます。
板橋区の障がい者は今、どのくらいいて、どう変化しているのか。
データが語る現実を、ともに確認してください。
35,366人——板橋区の障がい者数
令和5(2023)年度4月1日時点で、板橋区に住む障がい者(難病含む)は35,366人です。
令和5年度の板橋区の人口は約57万人ですから、住民のおよそ6.2%が何らかの障がいを持っています。
約16人に1人という計算です。
内訳を見ると、こうなります。
| 区分 | 令和元年度 | 令和5年度 | 伸び率 |
|---|---|---|---|
| 板橋区人口 | 568,721人 | 570,076人 | 100.2% |
| 障がい者合計 | 32,169人 | 35,366人 | 109.9% |
| 身体障がい者 | 17,832人 | 18,555人 | 104.1% |
| 知的障がい者 | 4,011人 | 4,440人 | 110.7% |
| 精神障がい者 | 5,184人 | 6,575人 | 126.8% |
| 難病(医療費助成認定者) | 5,142人 | 5,796人 | 112.7% |
(出典:板橋区障がい者計画2030、令和6年3月)
人口はほぼ横ばい、なのに障がい者は10%増
この表で最初に確認してほしいのが、人口の伸び率(100.2%)です。
板橋区の総人口は5年間でほとんど変わっていません。
それでも、障がい者全体は109.9%(約10%増)に増えています。
人口が増えたから、という説明はできません。
社会的・医学的な要因によって、障がい者数それ自体が増加しているのです。
精神障がい者の急増——5年で1,391人増
中でも突出しているのが、精神障がい者の増加です。
令和元年度に5,184人だった精神障がい者は、令和5年度には6,575人になりました。
5年間で1,391人増、令和元年度比で126.8%(約27%増)——他の区分と比べて際立った伸びです。
身体障がい者の伸びが4.1%、知的障がい者が10.7%であるのに対し、精神障がい者は26.8%増。
区の全人口が0.2%増にとどまっている事実と並べると、この数字の重みがよくわかります。
これは単なる「発見の増加」ではありません。
社会全体のストレスの増大、コロナ禍の影響、そして精神障がいへの理解が広がり受診につながる人が増えたことなど、複合的な要因が重なっています。
さらに注目すべき数字があります。
自立支援医療(精神通院医療)の申請数も、同じ期間に3,809件増(伸び率:約126%)となっています。
手帳を持つ人だけでなく、精神科への通院で生活を支えている人が急増している——これが板橋区の現実です。
精神障がいは「見えにくい」からこそ、手を差し伸べにくい
身体障がいや知的障がいは、目に見えやすいことも多いです。
しかし精神障がいは、外見からはわかりません。
うつ病、統合失調症、双極性障がい、発達障がい……いずれも、日常生活では「普通に見える」場面が少なくありません。
だからこそ、支援の手が届きにくい。
職場でも、学校でも、地域でも、「まさかあの人が」という誤解や偏見が当事者を苦しめます。
板橋区が令和4年度に実施した「障がい者実態調査」では、精神障がいのある人の5割前後が、差別や嫌な思いを経験したと答えています。
発達障がいのある人にいたっては、6割が同様の経験を持っています。
数字が増えているということは、それだけ多くの人が、今もその苦しさの中にいるということです。
障がい福祉サービスの費用も増加——財政課題として向き合う
障がい者数の増加に伴い、福祉サービスの費用も増え続けています。
| 年度 | 決算額 |
|---|---|
| 令和2年度 | 約113.4億円 |
| 令和3年度 | 約121.7億円 |
| 令和4年度 | 約129.4億円 |
(出典:板橋区障がい者計画2030、p.24)
令和2年度から令和4年度の2年間で、約16億円増えています。
今後も障がい者数の増加に伴い、サービス費用は増え続けることが見込まれます。
財政が厳しいからサービスを削る——そうなってはいけません。
同時に、限られた資源をいかに効率よく、必要な人に届けるかという知恵も問われます。
私は議会の場で、財政の健全性を保ちながら支援の質を上げる議論を続けていきます。
データを「自分ごと」として受け取ってほしい
35,366人という数字を見て、「多いな」と感じた方もいるかもしれません。
でも考えてみてください。
約16人に1人です。
あなたの職場に、学校に、ご近所に、必ずいる。
もしかしたら、あなた自身がそのひとりかもしれません。
あるいは、まだ気づいていない「グレーゾーン」の方が、さらに多くいます。
障がいは、特別な人の話ではありません。
誰もが、いつかは当事者になり得る。
だからこそ、板橋区全体の問題として、みんなで考えていく必要があります。
次回予告
第3回では、2024年4月に施行された改正障害者差別解消法を取り上げます。
民間企業にも「合理的配慮」の提供が義務化されました。
あなたの職場や店舗は、対応できていますか?
板橋区の取り組みと課題を、具体的な事例とともに解説します。
「障がいと共に生きる板橋へ」連載一覧
– 第1回:なぜ私は障がい者政策に取り組むのか
– 第2回:板橋区の今——障がい者は5年で10%増、精神が急増している(本記事)
– 第3回以降:順次公開予定