先日、郷土資料館で開催中の第20回板橋区伝統工芸展「染と織」を見てきました。

板橋区立郷土資料館
「染と織」パンフレット

大和町で真田紐の制作を続ける市村藤斎さん、大谷口で江戸手描友禅を受け継ぐ寺沢森秋さん、高島平で江戸小紋の伝統を守る小林福司さんの仕事が紹介されています。

 

特に、うちのすぐ近所の高島平7丁目、住宅街の一角で江戸時代の技術をそのまま守り続けている、小林染芸の小林福司さんにはいつもお世話になっており、着物の染めもお願いしています。

小林染芸さんで染めていただいた着物

江戸小紋の特徴は、非常に細かい柄で染め上げることにあり、遠くから見たときと近づいて見たときで見え方が異なります。
複数の型紙で染めれば、より変化に富み深みある印象になります。
また絽のような透ける織物を江戸小紋で染めれば、下の着物と相まってさらに印象が変わっていきます。
知れば知るほどその魅力に惹かれていく、それが江戸小紋です。

小紋は室町時代に始まったと言われますが、江戸時代に広く親しまれるようになりました。
小林染芸の染め体験会で聞いた話ですが、江戸小紋が広がるきっかけは、徳川吉宗の「享保の改革」だったとのこと。
贅沢を戒めた享保の改革で、武士は無地の着物を着るようにとのお達しが出たのですが、「粋」を好む江戸時代の武士は「一見無地に見えるような細かい柄」である江戸小紋を身にまとうことでおしゃれをした、とのお話でした。

現代では、単に細かい柄をつけるだけならアイロンプリントでも可能になりましたが、伝統的な技術で、人の手が幾重にも触れた生地で仕立てた着物を身にまとうことで得られる、さわやかに包まれるような感覚は、アイロンプリントでは到底得られないものです。

「江戸小紋が制作できなくなる現実が近づいてきている」

そんなすばらしい伝統技術・江戸小紋ですが、小林福司さんは「制作できなくなる現実が近づいてきている」とのメッセージを寄せています。

 江戸時代の技術を受け継ぎ、そして高度な技術で制作される伝統的な伊勢型紙を用いて染めるという、連綿と続く歴史の中に自分が携われていることに幸せを感じています。皆様にはぜひ、その歴史の重みを感じていただければ幸いです。
 現在、糊やおが屑、絹布といった材料、そして型紙やヘラといった道具を製造する業者の廃業が相次いでいます。江戸小紋の技術を後世へと伝えていきたい気持ちはあっても、材料不足によって伝統的な技術による江戸小紋が制作できなくなる現実が近づいてきています。後を継がせることが難しい現状ではありますが、江戸小紋の魅力を伝えていくことはできると考えています。これからも体験会や講座を通じて、多くの方々に江戸小紋に触れていただき、その素晴らしさを感じていただく機会をご提供できればと思っています。

小林氏からのメッセージ

これは以前から私も議会質問やブログ記事で何度も取り上げてきていることで、材料・道具の不足や後継者不在などの要因で、歴史ある伝統工芸が失われる危機にあるということです。

こうした伝統技術は、失われたら、復活させるのは極めて困難です。
なんとかして守っていきたい。
そのためには、小林さんのおっしゃる通り、まずは知っていただくことだと思います。

小林染芸では、定期的に染め体験会を開催しています。
次は秋に予定しているとのこと。
参加ご希望の方は、小林染芸にメールをいただければ日程をお知らせするとのことです。

江戸小紋小林染芸

板橋区伝統工芸展「染と織」は、9/19までの開催です。
お見逃しなく、ぜひご覧ください!

第20回板橋区伝統工芸展「染と織-真田紐・江戸小紋・江戸手描友禅-」

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