2026年8月25日、千葉県大網白里市で、災害ボランティアとして活動してきました。
8月13日から14日にかけての「令和8年8月千葉豪雨」を受けての行動です。

私は大災害が起きたとき、「 できるだけ早期に、今できることをやる 」ことを行動習慣にしています。

さて、突然ですがクイズです。

『水に浸かった畳を1枚運び出すのに、大人何人が必要だと思いますか?』

この答えが、水害という災害の性格を、最も端的に教えてくれます。
答えは、あとで書きます。

先に、前提を述べておきます。

  • 費用はすべて私費です。政務活動費は充てていません。
  • 大網白里市災害ボランティアセンター(大網白里市社会福祉協議会が運営)を通した、一般ボランティアとしての参加です。個別のお宅を自己判断で訪問することはしていません。
  • 議員の肩書では動いていません。災害ボランティアセンターは政治的活動を明確に禁じています。

令和8年8月千葉豪雨の概要

2026年8月13日の昼過ぎから14日の未明にかけて、千葉県の広範囲を記録的な豪雨が襲いました。
気象庁は8月14日、この大雨を「令和8年8月千葉豪雨」と命名しました。

銚子地方気象台の気象速報によれば、千葉県では13日の昼過ぎ以降、 線状降水帯が3回発生 しました(13日17時58分、13日20時58分、14日2時8分)。
記録的短時間大雨の情報は25回発表され、レベル5大雨特別警報が19市3町に出されています。

被害は、千葉県全体で死者13名、行方不明1名、負傷者46名。
住家被害は床上浸水2,218棟、床下浸水1,987棟にのぼりました。

このうち大網白里市は、 床上浸水236棟、床下浸水230棟
床上浸水の棟数は千葉市、八千代市に次いで県内3番目です。
一方で、幸いにして人的被害はありませんでした。
災害救助法は、発災当日の8月13日に適用されています。

川が溢れたのか、下水道から溢れたのか

水害を語る際、「外水氾濫か、内水氾濫か」を確認することは重要です。

  • 外水氾濫 =川の水が堤防を越えて、あるいは壊して溢れるもの
  • 内水氾濫 =川とは関係なく、下水道や排水路が雨を処理しきれず、地表や下水道から溢れるもの

同じ「浸水」でも、原因も対策も、まったく違うからです。

大網白里市の場合は外水氾濫が主体でした。二級河川の小中川が氾濫し、準用河川の金谷川が越水。
加えて、専門家の調査では農業用の排水路からも水があふれ、被害が拡大した可能性が指摘されています。

ただし千葉県全体では様相が違います。国土交通省の資料によれば、今回、国が管理する河川の氾濫による被害はゼロでした。それでいて床上浸水が2,200棟を超えている。県全体としては、中小河川と内水による浸水が主体だったということです。

そしてもうひとつ、この災害を象徴する数字があります。
ウェザーニューズが約2万件の報告を集計したところ、 浸水被害を報告した人の55.7%——2人に1人が、浸水想定区域の「外」で被災していました。

この数字は、あとでもう一度出てきます。

なぜ、大網白里市だったのか

千葉県には、たびたび足を運んでいます。
令和元年台風の際は、長柄町に災害ボランティアとして入りました。
その長柄町も、今回また浸水しています(床上5棟・床下3棟)。

大網白里市に入ることにした理由は、8/4に熊本県御船町に入った理由と同じです。
「県外ボランティア」を受け付けていたためです。

【緊急報告】熊本県御船町に災害ボランティアに行ってきました

同市の災害ボランティアセンターは、8月14日、千葉県内で最も早く開設されました。
私は事前に登録を済ませ、8月25日に伺いました。

なお、私が伺ったあと、同センターは登録者が定員を超えたため新規の受付を休止しています。「市内在住者に限定した」のではなく「多すぎて一時的に止めた」というのが正確です。この違いは、後で触れます。

現地へ——災害時、道路は生命線

朝、余裕をもって出発したつもりでしたが、想定外の事態に泡を食いました。

通勤時間帯の渋滞に加えて、被災地に近づくにつれて通行止めが増えていきます。
にもかかわらず、カーナビが通行止めを知らなかったのです。

ナビの指示どおりに進むと、その先が通行止め。迂回しようとしても、また同じ道を案内してくる。
土砂崩れの現場もありました。
やむを得ずスマートフォンのナビを同時に立ち上げ、そちらを頼りに走りました。

車載のナビとスマホのナビが、まったく違うことを言う。
最新の状況を反映していたのは、スマホのほうでした。

結局、通常なら30分ほどの道のりに1時間かかりました。

大網白里市災害ボランティアセンターの周辺
ようやく災害ボランティアセンターに到着。軽トラックの運転席から

災害のとき、車載のカーナビは通行止めや冠水を反映していない可能性がある。
スマートフォンのナビと併用したほうがいいという、これは実務的な教訓です。

道路に関してもうひとつ言いますと、今回の千葉豪雨では、千葉県内で最大約2,500台の車が路上で立ち往生しました。
車が路上に残っていると、復旧作業そのものが止まります。緊急車両も、支援物資も、ボランティアも通れない。
災害時、道路は生命線です。

装備——水害には、水害の装備がある

今回、私は軽トラックをレンタルして持ち込みました。

レンタルした軽トラック
災害ボランティアにおいて、軽トラの威力は絶大です

災害ゴミの搬出は、運ぶ手段があるかどうかで作業量が決まります。
自前で持参したのは、角スコップ、剣先スコップ、手箕(てみ)、そしてブルーシートとロープ。
軽トラを借りるなら、ブルーシートとロープを忘れないでください。
荷台の災害ゴミを固定するのに必須です。

食料と水分は、自分で用意します。

昼食はおにぎり
昼食はおにぎり。センターまで戻れないことがあるので、その場ですぐ食べられるものを選びます

食事はおにぎり。水分は経口補水液で、これはサイドポーチに入れておきます。
両手が空いた状態で、いつでも水分補給ができるようにしておくためです。
夏場は塩分チャージタブレットも必須です。

装備も、地震のときとは少し違います。水害では泥と、下水混じりの水を扱うからです。
全国社会福祉協議会が配布している「水害ボランティア作業マニュアル」は、こう書いています。

厚手で長めのゴム手袋。 軍手はNG
防塵マスク(立体型がおススメ)
ゴーグル(コンタクト使用者は必須!!)
長ぐつ(長いタイプがいい)

環境省はこれに加えて「底に鉄板の入った安全靴(準備できない場合は、長靴等)」を挙げています。
熊本県御船町の災害ボランティア報告を行ったYouTube動画では、「踏み抜き防止用セーフティインソール」が必須、というお話をしました。

感染症のリスクもあります。
水害時の汚水には、破傷風やレプトスピラ症などの感染症にかかる病原菌が含まれることがあります。

こうしたリスクに対して、大網白里市災害ボランティアセンターの運用はしっかりしていました。
活動から帰ってきたボランティアは、まず長靴を水で洗い、消毒液に浸す。そして手を洗い、手指を消毒する。
これを全員に徹底していました。
こういうところに、センターの練度が出ます。

午前——タンスは、水を吸うと開かなくなる

午前中に伺ったのは、ごく普通の戸建て住宅でした。
床上浸水で、多くの家具や衣類がだめになっていました。

作業の中心は、家具類を運び出すこと。食器棚やタンスなど、かなりの量がありました。
ここで、水害ならではのことが起きます。

タンスは、水を吸うと引き出しが抜けなくなります。

木が膨張して、引き出しが枠に食い込んでしまうのです。
そして中の衣類も水を吸って、とんでもない重さになっている。
バールでできるだけ引き出しをこじ開けましたが、ガッツリ水に浸かった下のほうはまったく開かない。
重いまま運ぶしかありません。

これは、ご家庭だけではどうにもなりません。
特に、女性だけのお宅や高齢者のみ世帯では、まったくお手上げです。
こういうところが、災害ボランティアが切実に必要とされる所以です。

今回、私が持ち込んだ分を含めて、チームは軽トラ2台を使うことができました。
これが大きかった。
2台でピストン輸送を回すことで、午前中でほぼすべての災害ゴミを運び出せました。

災害ゴミ仮置き場

運び出した災害ゴミは、仮置き場へ運びます。

災害ゴミ仮置き場
重機が入って、運び込まれた災害ゴミを積み上げていきます

大網白里市では、旧大網小学校を災害ゴミ仮置き場に指定しました。

仮置き場に並ぶ白物家電
冷蔵庫、洗濯機。水に浸かった白物家電が延々と並びます

大網白里市の集計では、8月29日時点で災害ごみの受入件数は累計2,777件に達しています。
床上浸水236棟から出た「家財」が、こうして形になって現れる。
浸水被害の量というのは、この景色を見ないと分からないなと、毎回思います。

午後——災害ボランティア界のラスボス『濡れた畳』

午後に伺ったのは、古くからあるとみられる、広い平屋のお宅でした。
水に浸かった何十畳もの畳が、腐りつつありました。

ここで、冒頭の質問に戻ります。
濡れた畳1枚を運ぶには、大人何人が必要か?

乾いている普通の畳なら、大人ひとりでもなんとか運べます。
ところが、水を吸った畳は、まったく次元の違う重さになります。

ひとりでは不可能。
ふたりでもまず無理。
大人4人で、ようやくギリギリいけるかどうか。
できれば6人ほしい。

これが答えです。

私は濡れた畳のことを「災害ボランティア界のラスボス」と呼んでますが、一度でもこれを持ったことがある人なら、これが冗談でもなんでもないことがわかると思います。

このお宅では畳を運び出せずにいたため、奥様は濡れた畳の上に置かれたベッドで寝ておられました。
平屋で2階がないため、寝る場所がそこしかないのです。
まったく痛ましい限りでした。

今回、チームには工務店にお勤めとみられる慣れた方がおり、豊富な経験・技術とともに、その方が持ち込んだ資材を使うことができました。
この方が持ち込んだネコ(一輪車)を使って、濡れた畳を効果的に運び出すことができたのです。
(この方ですら、1枚運び出すごとに肩で息をしていましたが…)

2台の軽トラをピストン輸送で回し、2部屋分の家具と、20畳ほどの濡れた畳を運び出すことができました。
これは、ちょっとした偉業だと思います。

「ようやく、少し先が見えた」

作業が終わったとき、そのお宅の奥様が、涙ぐんで、こうおっしゃいました。

「ようやく、少し先が見えた」

私としては、何よりうれしい言葉でした。

災害ボランティアは各家庭の片付けに従事することが多く、活動は地味ですが、それぞれのご家庭にとっては、災害ボランティアが来なければ、本当にどうにもならないのです。

もうひとつ、この日うれしかったことがあります。
一緒に活動したメンバーの中に、今回が初めての災害ボランティアだという高校3年生がいました。
将来、災害に対応するような仕事をしたいということで参加されたそうです。
こういう方が現場に来てくださることが、いちばんの希望です。

水害は、地震よりきついのか

さて、先に触れたプロと思われる方が、終了後にこんなことをおっしゃってました。

「地震より、水害のほうがきつい」

これは、正直、分かる気がします。
濡れた畳に象徴されるように、水を吸ったものはとにかく重い。
しかも重いうえに壊れやすい。
そんなものと一日中格闘することになります。

さらに、今回はありませんでしたが、泥の掻き出しに従事することもあります。
これも重労働です。腰がやられそうになります。

一方で地震は、耐震化が進んだ効果で、建物の倒壊がかつてより減ってきていると感じられます。
もちろん建物が倒壊してしまえば、その片付けは絶望的な作業になりますが。

また水害の現場では、ワンブロック違うだけで、被害がまったく違うということがよく起こります。
ここは全然平気なのに、1本先の道ではとんでもない被害になっている。
実際、今回も大網白里市が床上浸水236棟だったのに対して、隣接する白子町は床上浸水・床下浸水ともにゼロでした。
また8/22には板橋区でも大雨が降りましたが、高島平・蓮根・舟渡といった地域では床下浸水レベルの出水だったのに対し、台地の上の地域はさほど被害がなかったそうです。
水害の被害は、驚くほど局所的です。

被災された方へ——写真を、撮ってください

ここからは実務的な話です。浸水の被害に遭われた方に、ぜひお伝えしたいことがあります。

1. 畳は、泥水に浸かったら諦めてください

畳は、雨水が少しかかった程度なら、陰干しして再利用できる可能性もあります。
しかし泥水に浸かってしまった畳は腐りやすく、カビや病原菌の宝庫になってしまいます。廃棄するしかありません。
できるだけ早く屋外に出して、カビが広がるのを防止してください。
(それがすぐできれば苦労はしないよ、という話ではあるのですが…。「ラスボス」は手強い😓)

2. 何よりもまず、乾燥です

床上浸水した場合、早く乾燥させないと床板がだめになります。
「消毒より、清掃と乾燥が最優先」というのは国の公式な指針です。

厚生労働省は、はっきりこう書いています。

感染症予防のためには、清掃と乾燥が最も重要です
清掃が不十分だと、消毒の効果を発揮できません!!
屋外(床下や庭)の消毒は原則不要です

日本環境感染学会も同じ立場で、板橋区の案内も同じことを書いています。
まず泥や汚れを取り除く。そして乾かす。消毒はそのあと。順番が逆だと効きません。

なお、消石灰の取り扱いには十分注意してください。厚生労働省は「まいた消石灰が飛散して目に入ると、大変危険です。目に入った場合、失明する恐れがある」と注意を促しています。
現行の主要な指針の消毒薬リストに、消石灰は含まれていません。

また、乾燥には「サーキュレーター(送風機)」を使うと非常に効果的です。
濡れた床板がある部屋などでは、できるだけ早く清掃をして、サーキュレーターをずっと回し続けてください。
私も所属する全国災害ボランティア議連では、サーキュレーターの貸し出しに尽力していらっしゃる議員もいます。

3. どの部屋が、どの高さまで浸かったか——必ず写真を

これが非常に重要です。
浸水の深さが、その後に受けられる支援の中身を大きく左右するからです。

内閣府の「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」では、外力が作用していない浸水(内水氾濫など)の場合、こういう区分になっています。

浸水の深さ 判定 主な支援
床下浸水 一部損壊 支援の対象外
床上0.1m未満 準半壊 応急修理 36.7万円
床上0.1m以上1m未満 半壊 応急修理 75.7万円
床上1m以上1.8m未満 中規模半壊 加算支援金 最大100万円
床上1.8m以上 大規模半壊 基礎50万円+加算最大200万円

つまり「床下」か「床上」かの境目に、応急修理36.7万円を受けられるかどうかの断崖があります。
そして「床上1m」の境目には、生活再建支援金がゼロか最大100万円かの分水嶺があります。

では、その深さはどうやって測るのか。運用指針にはこうあります。

浸水深は玄関内、掃き出し窓等の浸水痕により測定することが考えられる。
スマートフォン等の撮影画像から算出した浸水深を用いることも可能。

あなたが撮った写真が、そのまま判定の根拠になり得ます。

内閣府が住民向けに示している撮り方は、こうです。

  • 家の外は、なるべく4方向から
  • 浸水した場合は、メジャーなどをあてて「引き」と「寄り」の両方を
  • 家の中は、被災した部屋ごとの全景と、被害箇所の寄り(内壁、床、窓、サッシ、襖、システムキッチンなど)をすべて
  • 表札を含む住家の写真も(申請者の居住家屋であることの確認用)

板橋区も同じ案内をしています。区のホームページには「浸水被害はメジャーなどを使用し、水の深さが確認できるよう撮影してください」と明記されています。

4. 判定に納得できないときは、再調査を申請できます

罹災証明書の被害認定調査は、三段階になっています。

  1. 第1次調査 ——外観の目視のみ
  2. 第2次調査 ——内部に立ち入って調査。被災者からの申請で行われます
  3. 再調査 ——判定結果に納得できない場合、被災者から依頼できます

内閣府の運用指針には、こう書かれています。

被災者から判定結果に関する再調査の依頼があった場合には、当該被災者の依頼の内容を精査し、再調査が必要と考えられる点があれば、その点について再調査を行う。再調査に基づく住家の被害の程度の判定結果については、理由とともに当該被災者に示す。

再調査の申請について、国が定めた一律の期限はありません(自治体ごとの運用です)。ただし被災者生活再建支援金の基礎支援金は災害発生から13か月以内という期限があるため、実質的にはそこが目安になります。
なお第2次調査は、内閣府が「判定される被害の程度が第1次調査の判定結果と異なる可能性がある」と注意を促しています。上がることも、下がることもあるということは理解したうえで申請してください。

現場では、「床上浸水が認めてもらえない」という話も伺いました。
だからこそ、写真を撮っておいてください。
目の前のバタバタで忘れがちですが、非常に重要なことです。

板橋区へ持ち帰る、3つのこと

ここからは、板橋区議会議員としての話です。

① 事前避難は、間に合わないことがある

今回いちばん考えさせられたのは、ここです。

強い雨が降ってきたな、と思ったときには、もう足元まで水が来ている。
これは板橋区はじめ、各地で起きている線状降水帯による豪雨も同じです。
「早めの避難を」と言われますが、 正直に言って、事前避難ができない場面が確実にあります。

この実感には、裏付けがあります。

第一に、予測は当たらないことがあります。
気象庁は2026年5月29日に防災気象情報を全面的に作り変え、「線状降水帯直前予測」を新設しました。
その約3か月後の千葉豪雨は、新体制の最初の大規模な実戦だったことになります。
結果、8月13日17時58分に発生した1回目の線状降水帯には、直前予測が先行していません。2回目以降は的中しています。
半日前の予測についても、気象庁自身が実績を公表しています。令和7年の適中率は約14%。捕捉率(発生を事前に捉えられた割合)は約71%まで改善しましたが、「呼びかけがあったら本当に降る」確率は、まだ高くありません。
技術は着実に進歩しています。それでも「予測を待ってから動く」という設計には、限界があります。

第二に、想定していない場所が濡れます。
先に書いたとおり、今回、浸水被害を報告した人の55.7%が浸水想定区域の「外」で被災しています。そもそも内水(雨水出水)のハザードマップを公表している市区町村は、全国1,121のうち186、約17%にとどまります。洪水のハザードマップが約99%であることを考えると、内水は圧倒的に遅れています。

第三に、ハード対策は間に合いません。
国土交通省の実施中期計画によれば、気候変動を踏まえた下水道の浸水対策の完了率は令和5年度末で5%。令和12年度でも12%、100%の達成は令和40年度(2058年度)の見通しです。
では東京の下水道を強くすればいいのか。
東京の地下はすでにかなり掘り返されています。管を太くすることがどこまでできるのか、いくらかかるのか、何年かかるのか。
ここはきちんと検証する必要があると申し上げておきます。

では、どうするか。
逃げる時間がないのなら、上に上がるしかありません。垂直避難です。

ただし、 垂直避難で足りるかどうかは、住んでいる場所と、水害の種類によって違います。
板橋区内における荒川氾濫時の想定浸水深は、最大5メートル。(高島平、蓮根、舟渡などの低地において)
5メートルというのは、だいたい建物の2階の天井のあたりです。つまり、2階に上がっても足りません。

ただ、これは「荒川氾濫時」です。
線状降水帯による集中豪雨であれば、2階に上がればなんとか命をつなぐことはできるでしょう。

2階で耐えられるケースと、高台の避難所へ向かう必要があるケースがあるわけです。
その線引きを知るためには、ハザードマップを見なければなりません。

板橋区のハザードマップは、今や7種類あります。

  • 洪水ハザードマップ
    • 荒川氾濫版
    • 荒川浸水継続時間版
    • 中小河川版
  • 高潮ハザードマップ
    • 氾濫版
    • 浸水継続時間版
  • 雨水出水ハザードマップ
  • 土砂災害ハザードマップ

の7つです。
一度、見てください。
ご自宅の位置において、「2階に逃げればいいケース」と「高台に逃げなければいけないケース」を頭に叩き込んでください。

宅地建物取引業者の方へ(板橋区ハザードマップ作成状況)
(7種類のハザードマップが一望できるページはここです)

② 災害時は、道路が命

これは先に書いたとおりです。
カーナビは通行止めを知りません。スマホのナビと併用しましょう。
そして路上に取り残された車は、復旧そのものを止めてしまいます。
やむを得ないケースならともかく、自分から冠水した道路に突っ込むようなことは絶対に避けてください。

板橋区に引きつけて言えば、首都直下地震が起きたとき、環状七号線・環状八号線の内側は深刻な交通麻痺に陥ると想定されています。
熊本での活動報告でも書きましたが、区としての受援計画——支援をどう受け入れるかの手順——が実効性のあるものかどうか。
水害の場合は、同じことが異なる層位で立ち上がってくるでしょう。

③ ボランティアの入口を、誰が設計するのか

現地で感じたのは、災害ボランティアの受付方法がセンターごとにまったく違うということでした。
大網白里市災ボラセンターでは、事前に名前や住所を登録すると「9時から12時の間に受付してください」とのメールが来ました。
では10時や11時に行っていいのか。正直よく分かりませんでした。
(実際、渋滞で9時に間に合わないかもしれない状況になり、ひやひやしました)。

一方、同じ千葉県内でも千葉市はアプリを使っていました。
「JoyLinks」というシステムで、事前登録から活動日の予約、QRコードでの受付、ニーズの登録、マッチング、資機材の貸出返却まで、ほぼ全工程をカバーしています。
しかも千葉市は、募集範囲を8月17日は「市内在住・在勤」、8月21日からは「千葉県内在住」へと、段階を踏んで拡大しました。計画性が伺えます。

では、板橋区はどうか。調べてみました。
「いたばし災害ボランティアセンター 設置・運営マニュアル」(令和8年3月発行)が公開されています。58ページ、様式25種。

まず申し上げたいのは、 これはよくできている ということです。
当日のオペレーションは驚くほど具体的です。被災者からの電話を受けるときの言い回しが①から⑫まで台本になっている。受付時の口頭確認は9項目。家屋の破損状況は7項目のチェックリスト。応急危険度判定が「赤」なら屋内での活動は不可。マッチングは挙手方式で、リーダーを決めてその携帯番号を控える——。ここまで書けている自治体は多くありません。

そのうえで、空白が3つあります。

ひとつ目。募集範囲が、どこにも書かれていません。
本文に「区内在住」「都内」「全国」「段階的拡大」といった記述が一つも出てきません。
答弁では「区の内外を問わず、ボランティアの受入れを行います」(令和8年2月 予算審査特別委員会)とされていますが、その方針が文書になっていないのです。

ふたつ目。受け入れの上限も、受付を止める基準もありません。
案件ごとの「最低◯人・最高◯人」という欄はあるのですが、センター全体として1日に何人まで受けるのか、どうなったら受付を止めるのかが書かれていません。
大網白里市は、登録が定員を超えて新規受付を休止しました。止めることも運営です。止め方が決まっていないと、止める瞬間が場当たりになります。

みっつ目。完全な、紙の運用です。
様式25種はすべて紙。備蓄品には付箋紙が300枚計上されていて、ボランティアが書いた付箋を物理的に貼り替えていく方式です。

ただ、ここには続きがあります。
板橋区は、令和8年3月16日の災害ボランティアセンター運営訓練で、kintone(クラウドシステム)による受付体験を実施しているのです。

訓練ではクラウドで受付をやってみている。
ところが、同じ月に発行されたマニュアルは付箋300枚のまま。
これは「できない」のではなく、まだ反映されていないだけです。

そして、入口そのものも狭いのです。
板橋区には災害ボランティアの登録制度があります。
ところが登録の要件が「養成講座の受講」で、その養成講座は年1回・定員20名。
結果、登録者数は導入当初の75人から、令和元年度の124人を経て、直近で177人です(令和7年10月 決算調査特別委員会)。
しかもこの登録制度は、マニュアルにも区や総合ボランティアセンターの案内ページにも載っていません。
一方、23区を見ると、少なくとも5区(世田谷・練馬・江戸川・足立・渋谷)はWebフォームで誰でも登録できます。

AIを使えば、小さな自治体や団体でも、Webアプリはすぐに作れる時代になりました。
むしろ人手が足りないところこそ、AIを使うべきです。

いわんや、板橋区のような規模の自治体がシステム化に手をこまねいていたら、いざというときの混乱は目に見えています。

千葉市が使っていたのは既製のシステムですが、登録受付のWebフォーム1枚なら、いまは本当にすぐ作れます。
講座の受講を要件とする「厚い登録」はそのまま残したうえで、Webで誰でも登録できる「薄い登録」を併設する。
これなら、いまの枠組みを何も壊さずに、入口だけを広げられます。

災害が起きてから「ボランティアを募集します」と言っても、遅いのです。

災害ボランティアに行ってみたい、という方へ

最後に、実務的な話を書いておきます。

この夏、石川・富山・福井・北海道など、全国でかつてないレベルの豪雨が起きています。
各地域で、動ける人が動くしかありません。

災害ボランティアに特別な技術は必要ありません。
適切に準備すれば、健康な方なら誰でもできます。

今回、初参加の高校3年生が立派に活動していました。それが答えだと思います。

ボランティア活動保険には、出発前に、お住まいの地域の社会福祉協議会で加入してください。
現地でも加入できますが、お住まいの場所で加入するのがスマートです。
板橋区にお住まいなら、いたばし総合ボランティアセンターで加入できます。土日でもやっています。
保険のプランについては、「天災プラン」に入っておくのが間違いないでしょう。
災害によっては天災プランへの加入を必須とされることもあります。

災害ボランティアを行う際は、必ず災害ボランティアセンターを通してください。
自己判断で個別のお宅を訪問することは、絶対に避けてください。

災害ボランティアは、自己完結が原則です。
交通費・宿泊費・食費は、すべて自己負担。被災地に負担をかけない、というのが大前提です。

軽トラの威力は絶大です。
もしお金に余裕があれば、レンタルして持ち込むことをおすすめします。
繰り返しますが、ブルーシートとロープを忘れずに。
なお今回の千葉豪雨では、災害ボランティア向けの高速道路の無料措置が2026年8月19日から10月31日まで実施されています。

災害ボランティア活動証明書
活動を終えると、災害ボランティア活動証明書をいただけます。高速道路の無料措置などに使います

白里海岸にて

活動終了後、帰る前にご当地の名所を訪ねてみようということで、白里海岸まで足を伸ばしました。

白里海岸
白里海岸。この日は青空で、海水浴を楽しむ方々がいらっしゃいました

海水浴を楽しんでいる方々がいらっしゃいました。
作業着姿の私は、まるきり場違いな人間でした。

でも、これでいいのだと思います。
被災した地域のすぐ隣に、いつもどおりの日常がある。
その日常を被災した地域にも早く取り戻すことが、私たちのやっていることの目的なのですから。

またこの白里海岸が大勢の海水浴客で賑わうように復興していくことを、心よりお祈りいたします。

まとめ

  • 2026年8月25日、令和8年8月千葉豪雨で被災した千葉県大網白里市で、災害ボランティアとして午前・午後1件ずつのお宅を支援した。私費・市社協の災害ボランティアセンター経由・議員の肩書は使わない、という前提で入った。同市の床上浸水は236棟で、千葉県内3番目である。
  • 午前の作業は主に家具、午後の作業は主に畳。乾いた畳なら男手ひとりで何とか持てるが、 水を吸った畳はひとりでは不可能、ふたりでも無理、大人4人でようやくギリギリ、できれば6人ほしい。 2台の軽トラで、2部屋分の家具と20畳の濡れた畳を運び出した。作業後、そのお宅の方から「ようやく少し先が見えた」と言っていただいた。
  • 熟練者曰く、水害は地震よりきつい。濡れたものは重く、そのうえ壊れやすい。耐震化で建物の倒壊は減ったが、浸水は耐震化しても防げない。
  • 浸水したらまず清掃と乾燥。そして どの部屋がどの高さまで浸かったか分かる写真を、メジャーをあてて撮っておくこと。 床下か床上かで応急修理36.7万円の有無が、床上1mで生活再建支援金ゼロか100万円かが決まる。判定に納得できないときは再調査を申請できる。
  • そして——この夏、同じような豪雨が各地で降っている。予測は当たらないことがあり、想定区域の外が濡れる。「事前避難ができない」という前提に立つなら、残るのは垂直避難と、自分の場所をあらかじめ知っておくことだけである。板橋区のハザードマップは7種類ある。一度、見てください。

被災された皆様の生活が、一日も早く元に戻りますよう、引き続きできることをやってまいります。


出典・参考資料

令和8年8月千葉豪雨

災害ボランティア

罹災証明書・被害認定

感染症・衛生

線状降水帯・内水氾濫・下水道

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