3/22に登壇した予算委員会総括質問の解説、第4回です。

今回は「国内一次産業に力強さを」と題した、林業と農業に関する質問についてです。

戦後、日本の政治は一貫して一次産業を軽視してきた

このような質問をした背景を質問中に話すことは時間が足りずできなかったのですが、質問の背景には、以前もブログに書いた、世界三大織物のひとつ「大島紬」がピンチに陥っているという状況があります。

文化はカネ「だけ」では育たない

1964年に木材が自由化されて以降、日本の林業はビジネスとして成立しないものになってしまいました。

そのあたりの事情は、以下の記事が詳しいです。

なぜ林業は衰退したのか 森林の「多面的価値」に新ビジネス機会

「極端な表現ですが、我々が携帯電話のない社会に戻れないように、外国産材のない木材・建築業界はもはや成り立たないのです。問屋への電話一本で、ミリ単位に加工された外国産材が、短納期で届くシステムができあがっている。一方で国産材は、流通量が少なく質も不安定で、トータルで見ると高コストです。経済合理性だけで考えれば、国産材を使う意味はほとんどありません」

ワイス・ワイス 佐藤岳利代表

「外国から安く買って来ればいい」

農業も林業も、戦後、この発想でした。

しかしこのような、生活必需品を自国で賄おうとする努力を怠ったツケが、今回ってきています。

昨年から始まった木材価格の高騰「ウッドショック」が、円安やロシアのウクライナ侵攻により、さらに拍車がかかっています。

ロシア発『ウッドショック』の衝撃 ~もう家が買えない!?~

「仕事仲間が全国にいるんですけど、『合板ある?』『あるわけねえだろ』と答えられるくらい本当に日本全国どこにもないですね。もともと品薄なところに戦争が始まってロシアの資材が入ってこなくなってしまった。例えばコロナ前に契約したお客様なら、延べ床面積27坪で3000万円ぐらいの予算でいい家が建てられましたが、今は3800万円くらいないと同じレベルの家は作れない感じですね」

富士ソーラーハウス 大澤正美社長

農産物も同様の事情により、価格が高騰しています。
ただでさえ先進国最低レベルの食料自給率の日本。ウクライナ侵攻により小麦などの農産物の価格が高騰すれば、その影響が直撃します。

戦争などの国家的危機に陥ったとき、今まで通りに食品・木材を輸出してくれる国はありません。
「生活安全保障」の考え方が欠落した戦後政治は、あまり好きな言葉ではありませんが「お花畑」というやつでしょう。

日本の農業・林業は既に自力で競争力を回復できないほど弱体化してしまいましたので、農家戸別所得補償制度などの制度によって、政治の力でもう一度育てなければなりません。

板橋区のような自治体としては、可能な限り国産食材や国産木材を活用することが「生活安全保障」につながります。
この観点から、私は3/22の総括質問で以下の点を質問しました。

  • 板橋区では施設整備で木材を使用する際には極力国産木材を使用するという方針を持っているが、ウッドショックの影響はこの調達方針に影響しているか。
  • 学校給食やあいキッズの長期休暇中のお弁当、また保育園の食事などにおいて、国産食材、できれば板橋区産の食材について、一層の活用を進めてほしい。

区の答弁は

  • ウッドショックの影響等による木材資材の高騰や需要と供給のバランスに対する不安はあるが、木材の持続的生産の促進や環境負荷の軽減のため、費用対効果のもと、国産木材の使用を維持しており、今のところ区の調達に影響は出ていない。
  • 学校給食の食材については、米と牛乳は国産。その他の食材についても、学校給食の共同購入物資に国産食材を数多く取り入れるなど、国産食材の活用に取り組んでいる。野菜類については、区内の農業者でつくりますふれあい農園会の協力を得て、ジャガイモ、ダイコン、ニンジン、長ネギを納品いただくとともに、学校における食育授業にも協力いただいている。このほかにも大山と上板橋のとれたて村を通じて国産のカボチャやアスパラガスなどの野菜も購入している。今後も食育、食の安全の観点も踏まえて、地産地消と地域連携に努めていきたい。
  • あいキッズで使用する食材について、区として直接的に関与することは難しいが、あいキッズの各受託法人には、食について国産食材、特に国内産の食材の活用を求める意見・要望があることについては、しっかりと伝えていきたい。
  • 保育園給食における食材の調達につきましては、可能な限り各保育園の近隣事業者から購入することとしている。納入される食材については、バナナやパイナップルなど一部の果物を除いて、ほとんどは国産食材としている。安心・安全な食を提供するという観点から、今後もできる限り国産食材を、また可能であれば板橋区産の食材を活用できるよう取り組んでいく。

といったものでした。

○中妻じょうた
  ウッドショックということが言われて久しい。しばらく前から木材の価格が非常に高騰している。これは1980年、90年ぐらいに既に木材の輸入自由化が行われておりまして、そこから山野の管理というものが行き届かなくなり、国内林業が成り立たなくなってきているという背景があるのではないかと思います。ウッドショックの影響が板橋区の公共施設における国産木材調達方針に出ているか伺います。

○政策経営部長
  区では、板橋区公共建築物における木材利用方針に基づきまして、公共施設等の整備に当たって、木材を利用した方法を推奨し、協定木材及び多摩産材の使用に努めることとしております。
  区の公共施設整備における木材の使用に関しましては、日光市との緑と文化の交流協定によりまして、板橋第一小学校や赤塚第二中学校、中台中学校の際に使用し、以降の施設整備におきましても、国産木材の使用に努めております。
  ウッドショックの影響等によります木材資材の高騰や需要と供給のバランスに対する不安はありますが、木材の持続的生産の促進や環境負荷の軽減のため、費用対効果の下、国産木材の使用を維持しておりまして、今のところ区の調達に影響は出ておりません。

○中妻じょうた
  今後のどれくらい使っていくかという話にもよっていくんだと思いますけれども、できる限り国産木材の活用にぜひ努めていただきたいとお願いいたします。
  続きまして、今度の農業のほうです。学校給食やあいキッズの長期休暇中のお弁当、また保育園の食事などについて、これまでも行われておりますけれども、一層の国産食材、できれば板橋区産の食材について活用を進めていただきたいと思いますが、伺います。

○教育委員会事務局次長
  まず、学校給食の食材についてでございますけれども、お米と牛乳は国産でございまして、その他の食材についても、学校給食の共同購入物資に国産食材を数多く取り入れるなど、国産食材の活用に取り組んでいるところでございます。
  野菜類につきましては、区内の農業者でつくりますふれあい農園会の協力を得て、ジャガイモ、ダイコン、ニンジン、長ネギを納品いただくとともに、学校における食育授業にも協力いただいているところでございます。このほかにも大山と上板橋のとれたて村を通じて国産のカボチャやアスパラガスなどの野菜も購入してございます。今後も食育、食の安全の観点も踏まえて、地産地消と地域連携に努めていきたいと思います。

○地域教育力担当部長
  あいキッズに関するご質問でございます。あいキッズにつきましては、3期休業日に行われている弁当事業者等による昼食提供サービスにつきましては、区が求めるあいキッズ事業の契約事項とは別に、受託法人が行うオプションサービスの1つとして現在行っているところでございます。使用する食材について、区として直接的に関与することは難しいところでございますが、あいキッズの各受託法人には、食について国産食材、特に国内産の食材の活用を求める意見・要望があることにつきましては、しっかりと伝えていきたいと考えております。

○子ども家庭部長
  保育園の給食に関してでございますけれども、保育園給食におけます食材の調達につきましては、可能な限り各保育園の近隣事業者から購入することとしております。納入される食材につきましては、バナナやパイナップルなど一部の果物を除きまして、そのほとんどは国産食材としてございます。安心・安全な食を提供するという観点から、今後もできる限り国産食材を、また可能であれば板橋区産の食材を活用できるよう取り組んでまいります。

○中妻じょうた
  ぜひそれぞれの所管でよろしくお願いしたいと思います。やはりこうしたウクライナ侵攻のような事態がありますと、食料品、生活必需品というのはあって当たり前のものではないんだ。それぞれの地元、そして地域、それぞれの国でちゃんと食料を生産する、農業や漁業や林業を大切にするということは非常に大事だと思っておりますので、そうした一助となるようにぜひ区としても今後とも取り組んでいただきたい、このように思います。どうもありがとうございます。

次回は、令和4年度事業最大の目玉とも言える「子ども家庭総合支援センター(児童相談所)」など、教育・子育てに関する質問の解説です!

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