能登半島地震の状況が心配な中ではありますが、板橋区議会議員として、2024年に訪れるであろう「試練」を概観していきます。
直近の政策課題で最も重要なものは、物価高対策でしょう。
だいぶご報告が遅れましたが、昨年10/19に令和4年度決算調査特別委員会の総括質問に立ちました。
最初の質問は「板橋区の決算および財政調整基金の推移について」でした。
冒頭、私はこのように申し上げました。
「令和4年度決算の数字、これをどう評価すべきか。この数字はいいのか悪いのか。
これは、令和4年度の数字だけをいくら眺めていてもわからないのです。
過去の推移を振り返り、板橋区政がどのような方針で運営されてきたのかを踏まえながら令和4年度の数字を見ることで、初めて見えてくるのです」
プロジェクターに最初に示したのが、このグラフです。
このグラフは、板橋区の過去20年間の財政調整基金残高の推移を表したものです。
財政調整基金とは、使途が自由な基金。いわば板橋区の貯金です。
この額がすなわち「どれくらいの蓄えがあるか」ということですね。
2007年、坂本区政スタート。同じ年に起こった重大事件とは?
2007年4月に坂本区政がスタートしましたが、奇しくも同じ2007年に起こった重大事件があります。
かの北海道夕張市が、財政再建団体に指定されたのが、同じ2007年でした。
この一件が全国の自治体に与えた衝撃は大きかったと思います。
自治体も破綻するんだ、と。
わがまちは大丈夫なのか。
多くの自治体関係者は心配し、財政再建に取り組みました。
板橋区も例外ではないことは、このグラフを見れば明らかでしょう。
3度の財政危機。それでも積み上がる財政調整基金
坂本区政が始まって以来今日まで、財政危機と呼べる事態は3回ありました。
リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍です。
リーマンショックと東日本大震災の際は、財政調整基金を取り崩して予算編成をせざるを得ず、財政調整基金が減少しました。
しかしコロナ禍では状況が異なりました。
経済対策を矢継ぎ早に打ち出した2019年度は財政調整基金が減少しましたが、それ以降は税収増によって基金も旧回復し、令和4年度決算では過去最高額となりました。
この状況をどう分析するか?
それが私の最初の質問でした。
これに対し、区はこのように答弁しています。
○政策経営部長
コロナ禍の時期におきましては、執行率が低い事業があった一方で、企業業績の回復傾向が見られまして、特別交付金が大幅に増えるという状況がございました。そのため、剰余金が発生しまして、地方財政法に、それから板橋区の財政運営指針に基づきまして、翌年度以降の健全な財政運営に資するために、財政調整基金に積み立ててきました。そのため、めどとしていた額に迫る残高まで今来ているという状況でございます。コロナ禍で抑制していました公共施設の更新需要への対応、それから予測困難な社会情勢への変化に備えるということで、これらを考慮しまして、区政課題に迅速、柔軟に対応できるように基金を活用し、積極的な予算編成に努めながらも、健全な財政運営を維持していく必要があるだろうというふうに考えております。
答弁を聞きながら、正直、表層的な見解だなぁと感じていました。
「なぜ」企業業績が回復傾向になり、特別区交付金が増えたのか。
好景気だからでしょうか?
私には、とてもそうは思えない。
区民生活は厳しいと感じています。特に年金生活者や子育て世帯が大変です。
廃業するお店も多かったと思います。
この原因は私は「インフレ」であると思っています。
インフレだから“数字上”売上高や利益額が上がり、税収が増えているということではないでしょうか。
実際、インフレ率を加味した「実質賃金」は減少を続けています。
この総括質問で取り上げた際には「18ヶ月連続減少」だったのですが、12月のニュースによると「19ヶ月連続減少」と伸びてしまいました。
10月実質賃金2.3%減少、物価上昇で19カ月連続マイナス 残業減も響く=毎月勤労統計(ロイター)
私たちの給料は、実質的に減り続けているのです。
あらゆる場で少しずつの努力をしなければ、収入は増えていかない
板橋区も雇用主であり、多くの契約の元請でもあります。
板橋区としても、区としてできる分野において、可処分所得を増やす政策を打っていくべきです。
「何もしなくても給料が上がる」なんてことはありません。
あらゆる場で少しずつの努力をしなければ、収入は増えていかないのです。
私からは、23区内でも制定が広まっている「公契約条例」の制定を改めて求めました。
その際の答弁は以下のとおりです。
○総務部長
これまで区では、区議会の皆様のご意見なども踏まえまして、公契約に係る労働環境向上への取組を具体化いたしました。板橋区が発注する契約に係る労働環境の確認に関する要綱、さらにはチェックシートを策定をいたしまして、この令和5年度契約に適用しているところでございます。まずは、この要綱とチェックシートを事業者への働きかけのツールとして活用いたしまして、公契約に係る労働環境の確認と向上に取り組むことで、事業者の意識改革を一層促してまいります。あわせまして、今後も業界団体や働き手の方々など、現場の声を伺いながら、実態把握を踏まえた効果的な契約制度の在り方について、引き続き研究と検討を進めてまいります。
「研究と検討を進める」という、なんとも捉えがたい答弁ですが、区が現場で働く人々の待遇改善に本腰を入れるためにも、引き続き、公契約条例の制定をしつこく求めていきます。