5月14日の文教児童委員会で、令和8年度・2026年4月1日時点の保育所等入所状況が報告されました。

結論から書きます。

板橋区の実質待機児童は35人。昨年の7人から、28人増えました。

数字としては「全国の中では小さい」と見えるかもしれません。しかし、板橋区はここ数年実質待機児童ゼロを達成してきました。それが昨年7人、今年35人と逆戻りしています。

今日は、この35人の中身を細かく見ていき、私が委員会でどう質疑したか、そして私がこの12年訴え続けてきた「小規模保育支援の拡充」が、なぜ今こそ必要かを書きます。


1. 数字の中身—「全体は余っているのに、なぜ35人」

まず、令和8年度の数字を整理します。

項目 人数
定員 13,419人
申込み 12,846人(前年比+440)
入所 12,374人(前年比+227)
入所保留 472人(前年比+213)
実質待機児童 35人(昨年7→今年35)
欠員 1,033人

注目してほしいのは最後の2行です。待機児童が35人いるのに、欠員も1,033人ある。全体の定員は余っているということです。

それなのに待機児童が出る理由は2つあります。年齢のミスマッチと、地域のミスマッチです。

1-1. 年齢のミスマッチ—35人ほぼ全員が1歳児

待機児童35人の内訳はこうなっています。

  • ゼロ歳児:2人
  • 1歳児:33人
  • 2歳児以上:0人

ほぼ全員が1歳児です。育休明けで職場復帰したい世帯、いわゆる「1歳児クラスに入れたい」というニーズが、定員を超えて殺到している構図です。

1-2. 地域のミスマッチ—かつての南部から、今は赤塚へ

私は委員会で、地域別の傾向を質しました。

中妻:以前ですと北部のほうが比較的余裕があって、南部が厳しいという状況があったと思うんですけれども、どういったところが厳しそうだという、地域別の待機児の状況はどうでしょうか。

保育サービス課長:今回、実質待機児童が発生したエリアにつきましては、特に成増、赤塚、いわゆる赤塚のエリアで多く生じているというような状況でございます。

板橋区の保育需給は、地理的にも変化しています。北か南かという単純な構図ではなくなっており、赤塚エリアは土地が確保しにくく、新たに保育園を建てる選択肢が限られている。だからこそ、既存の小規模保育園の活用がますます重要になる、という議論につながっていきます。

1-3. 「61点で待機児童」という重さ

私は保育指数についても質問しました。
保育指数とは、認可保育園の入園審査において、各家庭の「保育の必要性」を数値化した点数です。

保育園入所は、各世帯の状況を指数化して、指数の高い順に決まります。両親ともフルタイムの共働きで、その他に特別な条件がないと「60点」になり、この点数で入れるかどうかがひとつの目安になります。

私の質問はこうでした。

中妻:35名中、60点以上の方が何人いるか分かりますか。

保育サービス課長:60点を超えている方は2名となっております。

中妻:60点超えている、60点以上、60点を含んでいる人が2名でいいですか。

保育サービス課長:60点を超えている方が2名でございます。

中妻:60点の方は、じゃ何名ですか。

保育サービス課長:具体的に申し上げますと、60点の方はいらっしゃらなくて、指数が61点という方が2人でございます。

つまり、61点ある方が2世帯、板橋区で保育園に入れていないということです。

61点というのは、両親フルタイム共働きの「60点」に加えて、「調整指数」というより厳しい事情を反映した加点が乗っている世帯ということです。
それでも入れない。
61点で入れないというのは、これは何とかしないといけない。 私は委員会でそう申し上げました。


2. なぜ増えたのか—出生率0.88なのに、ゼロ歳・1歳児が増えている謎

次に、なぜ今年待機児童が急増したのかという話です。

委員会では「ゼロ歳児・1歳児の保育ニーズが高まっている」「人口が増えている」という説明がありました。
私はそこにもう一つ質問を重ねました。

「子どもが増えているなら、それは自然増ですか、社会増ですか」

なぜこの質問が重要か。
板橋区の合計特殊出生率は下がり続けているからです。

合計特殊出生率の推移グラフ
合計特殊出生率の推移(令和元年〜令和6年)— 板橋区・東京都区部(23区)・全国

板橋区の出生率は、東京23区平均よりも、全国平均よりも、明確に低い水準にあります。2024年の0.84という数字は、23区平均0.96からも0.12ポイント離れており、その差は年々広がっています。

それなのに、ゼロ歳児・1歳児の人口が増えている。
生まれる子どもは減っているはずなのに、保育園に通う子どもは増えている。
つまり、社会増—外から子育て世帯が転入しているということです。

ここから一つの政策提案が出てきます。
転入してきた子育て世帯への、プッシュ型の保育情報提供を強化すべきだということです。

新しく板橋区に来た保護者は、保育園制度の仕組み、申込みの流れ、地域別の空き状況、優先順位の付け方など、何もわかりません。
共働きで時間がない中、わざわざ相談窓口に出向くのも難しい。
「こちらの園に申し込んでくれていれば入れたのに」というケースが現に起きています。

私の委員会での提案に対し、保育サービス課長は「重要だと認識している」「動画案内などをまとめている」「丁寧な案内に努める」と答弁しました。
これはぜひ形にしていただきたいところです。


3. 12年、私が訴え続けてきた「小規模保育支援」の話

委員会の質疑の中で、私はこう申し上げました。

中妻:そういった意味では、やっぱり小規模保育園の支援というのは、もう一回見直さないといけないのかなと。何回も質問していますけれども、他区で行われている小規模保育園支援が板橋区で行われていないという状況がありますので、改めて小規模保育施設の支援、23区他区並みの補助を求めたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

「何回も質問していますけれども」と言いましたが、私は実に12年、小規模保育の拡充を訴えてきました。

3-1. 2013年—東京スマート保育を真っ先に提案した

最初は2013年(平成25年)2月19日の文教児童委員会でした。

東京都が新年度予算案で「東京スマート保育」という制度を発表しました。これは定員6〜19人の小規模保育に補助を出す新制度で、現在の「小規模保育施設」の原型です。当時、待機児童解消の切り札として打ち出されたものです。

私はその発表会に参加し、すぐに区に持ち帰って質問しました。

中妻:制度の隙間だった6人以上19人以下の小規模保育に対して補助を出す。これは現在の『いたばし未来創造プラン』における今の待機児解消対策に、既に織り込まれているものですか。

区の答弁は「織り込まれていない」「今後の進め方を検討する」というものでした。
私は小規模保育という制度ができた時点から、板橋区での導入を求めてきたということです。

3-2. 2022年—「ばたばた倒産する前に手を打つべき」

2022年(令和4年)10月26日の決算調査特別委員会・総括質問。
この頃には、小規模保育園は板橋区にも増えていましたが、少子化とコロナの影響で、ゼロ歳児・1歳児枠の定員が埋まらず、経営が急速に悪化していました。

私はこう発言しました。

中妻:特にゼロ歳、1歳、2歳を対象としている小規模保育園において、その影響が顕著です。定員未充足になると人件費分によって急速に経営が悪化する、これが保育園の経営の特質です。

万一閉園になってしまった場合にソフトランディングさせる。園児を円滑にほかの園に誘導する、職員の方を円滑にほかの保育園で働けるようにする、こうした体制も必要です。

私はこのとき、運営支援だけでなく、閉園時のソフトランディング策、一時保育のDX化、保育園スペースの複合活用まで、ワンセットで提案しました。
「支援を」だけでなく、多角的な提案を行なってきたわけです。

3-3. 2024年・2025年—「認可保育園に出ているのに、小規模には出ていない3補助」

そして2024年(令和6年)11月28日の第4回定例会一般質問です。
小規模保育園の団体から切実な要望を受けた質問を行いました。

中妻:区内の小規模保育園は減少が続いていますが、板橋区は少子化を改善しようとしているわけですから、小規模保育園も可能な限り維持すべきです。認可保育園に対して行われる運営費助成のうち、零歳児保育特別対策事業、11時間開所保育対策事業、嘱託医加算などの補助が、小規模保育園に対しては行われておりませんが、他区ではこうした補助も行われています。板橋区でも小規模保育園に対し、これらの補助を行うべきです。

このときの区長答弁は
「公定価格の基本単価が認可保育所より高額に設定されているなど、運営コストの単純比較は難しい」
「今後、その他の支援の必要性についても研究する
というものでした。

翌2025年(令和7年)11月27日の第4回定例会で、私は再度、同じ問題を取り上げました。

中妻:1年前の質問において、私は小規模保育園への補助拡充を求めましたが、ゼロ歳児の定員未充足に対する運営費支援が開始されるなど、一定の前進があったことは評価します。一方で、依然として認可保育園に対して行われている補助の一部が小規模保育園には適用されていないという実態は変わっていません。他区においては、認可保育園同様の補助が行われている事例もあります。小規模保育園にのみしわ寄せが行くような補助の在り方は望ましくありません。認可保育園や他区の事例と比較して公平感のある補助を行い、安定した運営ができるよう支援していただきたい。

このときの区長答弁は、
「区の単独補助による支援の必要性について検討していきたい」
と、「研究」から「検討」へ半歩前進しました。


4. 今こそ、小規模保育園への支援拡充を

小規模保育は、まさしくゼロ・1・2歳の保育を担う制度です。
1歳児の待機児童が33人発生している今、小規模保育園をしっかり支援することは、1歳児の受け皿を確保するために最も重要な取り組みのひとつになるはずです。

ところが、小規模保育園は経営上、通常の認可保育園よりも厳しい状況に置かれやすい構造があります。

一つは、いわゆる「3歳の壁」です。
小規模保育は2歳までしか預けられず、3歳から別の保育園に転園しなければなりません。
保護者からすれば、最初から認可保育園に入れて長く通わせたいという心理が働きます。連携施設の確保で緩和はされていますが、不安は完全には消えません。

もう一つは、そもそもの定員数による収益力の違いです。
0歳から5歳まで引き受けることができ、規模も大きい認可保育園に比べて、小規模保育園は定員6〜19人と小さく、構造的にどうしても経営体力が劣ることになります。

にもかかわらず、小規模保育園は、認可保育園と比べて運営費補助が薄いままになっている。
同じゼロ歳児を保育しているのに、認可保育園には出る補助が、小規模保育園には出ない。
私が2024年・2025年に名指しした3つの補助—零歳児保育特別対策事業、11時間開所保育対策事業、嘱託医加算—は、その典型です。

ただでさえ構造的に厳しい小規模保育園の経営が、補助の不公平によってさらに圧迫されている。
これでは経営の安定も、保育士の確保も、定員の維持も難しくなります。
1歳児の受け皿として小規模保育園に期待するのであれば、まずその土台を整えることが先決です。


5. 板橋区の前進と、まだ足りないこと

板橋区も、手をこまねいているわけではありません。

  • 令和4年度から、ゼロ歳児欠員1人あたり月14万140円の独自補助を開始
  • 今回の委員会では、1歳児欠員にも未充足補助を拡大する方向で検討との答弁
  • 緊急対策として既存私立保育園への受入れ拡大依頼、空き保育室活用(板橋保育園で1歳児4枠を既に確保

これらは評価します。

しかし、以下の3つの補助は、今も小規模保育園には適用されていません。
江東区などでは既に取り組まれています。

  • 零歳児保育特別対策事業
  • 11時間開所保育対策事業
  • 嘱託医加算

区長答弁は「研究」から「検討」へ動きましたが、まだ実施には至っていません。

待機児童ゼロを続けてきた板橋区が、今年35人に戻った。
今こそ、小規模保育園の重要性をもう一度見直し、安定した経営を支援することが、1歳児待機の解消にとっても重要なステップになります。


おわりに

板橋区の待機児童35人、ほぼ全員が1歳児、地域は赤塚に集中、61点で待機の世帯が2世帯。背景には出生率0.84という厳しい数字、それでも転入による社会増で乳幼児が増えている、転入者への情報提供が追いついていない、地域偏在が解消されていない、そして小規模保育園の経営が補助の不公平の中で苦しい—こういう構造があります。

私はこの12年、小規模保育の支援拡充を一貫して訴えてきました。今回の数字は、私の主張がさらに切実になったことを示しています。

板橋区で質の高い保育がすべての希望世帯に行き渡るよう、引き続き提言してまいります。


出典・参考資料

  • 板橋区文教児童委員会 令和8年5月14日「令和8年度 保育所等入所状況について(令和8年4月1日現在)」
  • 板橋区議会会議録検索システム https://itabashi.gijiroku.com/voices/g07v_search.asp
  • 平成25年2月19日 文教児童委員会
  • 平成26年9月24日 第3回定例会一般質問
  • 平成29年9月21日 第3回定例会一般質問
  • 令和元年12月3日 企画総務委員会
  • 令和4年10月26日 決算調査特別委員会(総括質問)
  • 令和5年3月23日 第1回定例会(民主クラブ代表討論)
  • 令和6年11月28日 第4回定例会一般質問
  • 令和7年11月27日 第4回定例会一般質問
  • 板橋区子ども家庭部 子ども政策課(合計特殊出生率データ:令和元年1.08〜令和5年0.88、令和6年0.84)
  • 東京都保健医療局「人口動態統計」(東京都区部 合計特殊出生率)
  • 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」(全国 合計特殊出生率)

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